木村草太さんと学ぶ 私たちのくらしと憲法
2021年8月18日
パルシステム連合会は8月5日(木)、東京・東新宿本部で憲法学習会「私たちの生活と憲法~改憲四項目から、結婚、差別、コロナ対策まで」を開催しました。
5月6日、憲法改正手続きに関する国民投票法改正案が可決されました。憲法が専門で差別や人権問題に精通する木村草太東京都立大学教授にオンラインで講演いただき、自民党が掲げる「緊急事態条項創設」などの改憲四項目をはじめ、最近話題となった訴訟から、私たちのくらしと憲法のかかわりについて考えました。組合員、役職員など95名が参加しました。
憲法は私たちのくらしにどうつながっているか
開会にあたり平和・地域活動委員会の藤田順子委員長(パルシステム神奈川・理事長)は、「憲法は、国民の権利や自由を守るために国家権力を縛っているもの。憲法があることでくらしが保障されています。5月に国民投票改正案が可決されましたが、憲法は私たちのくらしにどうつながっているかを学びたい」とあいさつしました。
木村さんはまず憲法について「国家権力に対する張り紙のようなもので、過去の戦争、人権侵害、独裁などの失敗を繰り返さないために作られている」と説明しました。改憲四項目の現在の動きについては、「発議するのが難しい、行う意味がない、国民に受け入れられにくいなどで大きな動きになっていない」と話しました。
そして、現在憂慮すべき憲法問題について指摘します。「むしろ私たちにとって重要なのは、憲法が順守されていない状況です。先日、新型コロナウイルスの感染拡大で国会を開こうと総議員の4分の1が請求を出したのに、招集されませんでした。憲法53条は、総議員の『4分の1』の要求があれば内閣はその議会招集を決定しなければならないとなっています。改憲云々よりも現行憲法を順守しないということが起きている。堂々と憲法違反が行われている非常にまずい状況です」(木村さん)。
コロナ対策についても「『新型インフルエンザ等対策特別措置法』を流用しているが、新型インフルエンザのときは経路不明の感染者が確認された段階で「緊急事態」。条文どおりだと今回の新型コロナも、2019年12月の発生当初から適応ではと思っていましたが、適用の改正は2020年3月。実際の運用も”医療提供の支障が生じたら緊急事態宣言”というしくみになり、明らかに条文と違います」。そして「必要なことは根拠なしでやってしまおうという方針に見える。でも行政は法律に則らなければならないし、まして国民の自由や権利を制限する場合はきちんと根拠を作らないといけない。立憲主義の憲法原理が無視され、法律や政令による法的根拠を整えるための対応がずっと後手に回っていると言える。法律の仕切り直しが必要なのでは」と述べました。
身近な問題と憲法
東京オリンピックで話題になった女性差別発言、夫婦別姓や同性婚訴訟を取り上げ「差別は個人の尊厳や主体性を否定する判断だが解消はなかなかむずかしく、この発言を機会に差別のやっかいさや問題についてあらためて考えてもらえれば」と話しました。
「夫婦別姓は憲法の不合理な区別をされない『平等権』から、また同性婚は婚姻が生殖関係保護のみでないことなど、憲法は訴訟の提起の根拠となって社会に問題を訴えることができる。こうしたところから憲法が私たちの生活にかかわることがわかっていただけたのでは」とまとめました。