人生100年時代を元気で生き抜くために 健康長寿 鍵は“フレイル予防”
2021年2月15日
パルシステム連合会とパルシステム共済連は1月14日(木)、東京・新宿区の東新宿本部にて、人生100年時代到来にあたり、健康で元気な生活維持のため必要とされる生協の役割や取り組みを学ぶ講演会を開催しました。
現在100歳以上が8万人を超え、「2040年問題」に向け課題は深刻化して行きます。この課題をのりきるため元気な高齢期を迎える必要があり、そこで「フレイル予防」が大変重要となります。生協としても事業や運動で生涯にわたって組合員の暮らしを支え、安心できるすこやかな地域作りへの貢献が期待されています。
いつまでも社会と関わり、元気でいるために
地域活動を担当する組合員や役職員、地域活動委員会(連合会)及び、たすけあい活動委員会(共済連)関係者など101名がリモート等で参加。当会総合福祉事業推進室から組合員の年齢や利用の変化の報告のあと、「フレイル」の第一人者・飯島勝矢教授(東京大学・高齢社会総合研究機構)より、「フレイル」やそれを広げる取り組みについて学びました。参加者からは「はじめて知った」「すぐに身近な人に伝えたい」「今後の取り組みの企画や関わり方のきっかけになった」など多くの反響がありました。
※フレイルとは――加齢による心身活力の低下により生活機能が妨げられ、心身の脆弱性が出現、継続することで、要介護・死亡などのリスクが高まる状態。一方で適切な介入・支援により、心身悪化の進行速度を緩やかにすることができる。
開会にあたり「たすけあい活動委員会」の梅原隆子委員長(パルシステム山梨理事長)は、「いつまでも社会とかかわり、元気でいたいと願うばかりですが、現在コロナ禍で難しい状況です。近くに住む叔父叔母は『ステイホームで筋肉が衰えた』『人と会えず孤独』と口にします。人との接触を減らすことはコロナ対策で重要ですが、高齢者には大きな不安。今日の学習会は超高齢社会に向け、生協としてのかかわり方や取り組みのヒントになればと思い期待しています」とあいさつしました。
コロナ禍でのフレイルの懸念
パルシステム組合員の年齢変化や利用状況をふまえると、自立した生活を応援する事業やサービス、地域活動など、フレイル予防をキーワードとして事業や運動の組み立てが必要と考えます。高齢者のコロナの影響で検索すると、最近フレイルに関することが増えているのが気になっています。高齢者の身体活動時間が約3割減少。身体状況や精神状態、認知機能低下が進行し、介護の認定区分の変更も増えており、組合員にも同様の変化が起きていると考えられます。フレイル予防の重要性について飯島先生の話でより深めていただき、今後の取り組みに発展できたらと思います。(総合福祉事業推進室長・沖倉紅児)
フレイル予防は「自己管理」と「根拠のある良質なおどし」
講演:東京大学高齢者研究機構 機構長/東京大学未来ビジョン研究センター・飯島勝矢教授
長寿要因の約25%は遺伝で、残りは自己管理とされますが、そこでフレイル予防が鍵となります。要素は「食」「運動」「社会参加」の三位一体。これはこの先も永遠に不滅です。それらが低下する坂道をできるだけ緩やかにしたい。ですから早くからのフレイル予防を国民的運動にしたいと戦略を練っているのです。
私は根拠のある「良質なおどし」でフレイル予防戦略を考えています。「歩かないと歩けなくなりますよ」というだれもが聞いたことがあるさびついた言葉では意識を変えられません。では「2週間寝たきりだと7年分の筋肉をいっぺんに失いますよ」と伝えると眼を見開き「えっ、ほんと?」となる。また、筋肉に重要なタンパク質が70歳で6人に1人は摂取絶対量不足で、転倒リスクや免疫力の低下が心配されますが、国民に届いていない。パルシステムのような宅配システムをうまく使いながら、攻めに打った対策も期待されます。
産学連携でニューノーマルな地域社会をつくる
医師や研究者がフレイルの方すべてに対応するのは事実上無理。そこで自治体や産業界などとの連携が不可欠になります。自粛生活の長期化は外出頻度の減少という単純な話でなく、「スーパーに行けないから粗食でいいや」と「食」の型崩れなどゆゆしき問題も不随します。またフレイルチェックで連携している71自治体では筋肉や活舌の顕著な衰えが報告されており、このままではコロナ終息後、要介護者だらけになる懸念があります。
従来の肌と肌のふれあい、集まってわいわい――は人間の原点。そこは失ってはいけない。コロナが収束したとき、人とのつながりの最前線におられるパルシステムとの連携で、地域活動もこれまでの再開ではなく、新しい風を吹かせられたらと思います。(飯島教授)
目標を掲げ、作り込む活動で参加を呼び起こす
講演後、組合員より「男性の参加が少なく、足を運んでもらうための知恵があれば」という質問があり、飯島教授から「それが全国自治体の悩みであるが、フレイルサポーターの活動を単に集まるだけのイベントでない、必ず目標を掲げ、何か作り込んでいく活動にこだわることで男性の参加を呼び起こしている」という事例紹介がありました。
閉会のあいさつで地域活動委員会委員会の藤田順子委員長(パルシステム神奈川理事長)は、組合員の高齢化に伴い今後10年の間に、プレフレイル、フレイル、要介護の問題が生じること、コロナ禍でのその進行が進むことへの懸念を示しつつ、「パルシステムの得意分野の居場所やつながりづくり、食やその支えなどの事業と活動を通し応援できる」と将来を見据えました。また「フレイル予防は自分で管理可能であり、早い時期に気付いてもらえるよう伝えていきたい」とまとめました。