“災害ケースマネジメント”の事例から考える 一人ひとりが大事にされる災害復興
2020年11月4日
パルシステム連合会の地域活動委員会は10月8日(木)、東京・新宿区の東新宿本部で、災害時の生活再建の実態と今後の取り組みについて学習会を開催。46名がオンラインで参加しました。
苅宿亜基子副委員長(パルシステム埼玉常任理事)の司会進行で、NPO法人YNFの江﨑太郎代表理事の具体例を交えた講演やケーススタディから、災害ケースマネジメントの重要性を学びました。
委員会の藤田順子委員長(パルシステム神奈川理事長)は、「毎年大規模な自然災害が発生していますが、この状況を『自分ごと』として捉えどう対処すべきかなど、くらしの中から防災・減災を考える機会にしたい」とあいさつしました。
課題はむしろ発災後少し経ってから
「熊本地震から九州北部、西日本豪雨など災害支援にかかわり感じるのは、支援のあり方の画一性、公的支援制度の複雑性、何をもって支援は終わるのかなど」と、江﨑さんは活動で感じた課題や問題点を指摘。そして課題の顕在化は「片付けが落ち着いたり仮設住宅入居が決まるころ、少し遅れて始まります。住まいの再建≠生活再建ではない。だから長期的にかかわることが重要」だと話します。
ここで重要なのが「災害ケースマネジメント」。熊本地震以降つくられた「地域支え合いセンター」が被災者の直接の相談窓口となり、自治体の担当課、専門家、支援団体、ボランティアなどともつながり、一人ひとりの状況や実態にあわせて生活再建支援をしていく役割を担っています。ケースカンファ会議で共有し、どこにつなぐか、関わるか、またつなぎ先が適切だったかなど経過を確認します。「災害ケースマネジメントのポイントはいろんな人が“よってたかって支える”こと。行政だけ、民間だけでは難しいことが多々あるのを災害ケースマネジメントで乗り越えていきます」(江崎さん)。
「災害ケースマネジメト」の必要性
「強く感じること」と、江崎さんは九州北部豪雨での朝倉市の事例を紹介しました。「ここは長期避難指定となり、建築許可が下りず住宅再建ができませんでした。その指定が解除される前に、仮設住宅共有期限切れで強制退去命令が下り、住民は住まいを失うという事態に。地域支え合いセンターはあっても災害ケースマネジメント的発想がなく、住民が声を上げたので問題が明らかになったんです。災害ケースマネジメントが機能していれば、この事態は免れたかもしれない」と、江崎さんは悔しさを滲ませました。
「公的支援制度は非常にたくさんありますが、被災者は毎日片付けをしながら、家やこの先のことを憂慮し、制度を調べ、申し込みをしなくてはならない。高齢者のほとんどは『どうしていいかわからない』と言われます。一人ひとり個別訪問し状況を把握し、要望を聞きながら支援策を考え生活再建に取り組む。生活再建は単に住居の再建ではなく、安心して継続的に生活していくための包括的な環境を作ること。それが災害ケースマネジメントの重要な役割だと思っています」(江崎さん)。
講演の最後に江崎さんは、被災地の「今」に目を向けることは災害への何よりの準備になると説きました。
「被災地には生活再建まで行政が責任を持ってくれると思っている人が多くいました。ですが東峰村の事例からそうでないことがわかる。被災地から学ぶことはたくさんあります」
講演の後に、災害ケースマネジメトについてより理解を深めるため、事例に基づきグループワークを実施。「住まいの再建のために利用できる制度を踏まえ、どの再建方法がよいか」を4つのケースで議論しました。
最後に西村陽子副委員長(パルシステム東京常任理事)が「一人ひとりを大事にする災害ケースマネジメトの大切さ、再建の意味などを学びました。災害を『自分ごと』としてとらえ、被災地の今に目を向け風化させないことも大事。今日の学びを実践して活かしていきたい」と振り返り、学習会が終了しました。
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