秋葉・前広島市長、岡村・原爆の図丸木美術館学芸員とともに考える 戦後75年、未来へつなげる平和行動

2020年8月31日

平和な未来へつなぐため、私たちができること

パルシステム連合会の地域活動委員会は8月13日(木)、東京・新宿区の東新宿本部で平和学習会を開催。新型コロナウイルス感染症に配慮したオンライン参加も含め87名が参集しました。

地域活動委員会の西村陽子副委員長(パルシステム東京常任理事)が司会進行し、前広島市長で原水爆禁止広島県協議会代表委員の秋葉忠利さんは広島からオンラインで、原爆の図丸木美術館学芸員の岡村幸宣さんは会場で講演。その後両氏を交えたクロストークも行いました。

地域活動委員会の藤田順子委員長(パルシステム神奈川理事長)は「今年は5年に一度のNPT再検討会議が開催年で、パルシステムはピースフラッグを掲げて平和の願いを発信する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大で延期になりました。しかし歩みを止めることなく、平和な未来へつなぐ活動について講師のお二人とともに考えたいと思います」とあいさつしました。

前広島市長で原水爆禁止広島県協議会代表委員の秋葉忠利さん(写真中央)はオンラインで講演

核兵器のない平和な世界の実現のために~秋葉忠利氏

秋葉さんは「核兵器のない平和な世界の実現」について具体的な事例をあげながら説明し、現在、被爆の実相と被爆者のメッセージが世界的に共有されていることを「核兵器禁止条約締結に並ぶ成功例」としました。2017年の核兵器禁止条約実現に秋葉さんは「期限と目標を立て実践すること」の意義を説き、「唯一の被爆国である日本は批准し主要な役割を果たすべき」と強調。「日本政府が被爆者の立場に立ちはっきりと国際社会へ発言し始めたら、物事が大きく変わると思う」と話しました。

また、被爆者の話を直接聞ける最後の世代の私たちの責任として、「未来に伝える」ことについて思いを語りました。「被爆者の『このような思いを他の誰にもさせてはならない』というメッセージの意味を学術的に整理し、ホロコーストと同じレベルまで高めたい」とし、広島・長崎講座の国際的な開催や、芸術を通しての伝達にも言及しました。親から子、孫へとつなげる「平和の循環」の象徴となる材料に、秋葉さんがあらためて光を当てたのが「折鶴」です。広島では、経済的負担がなく世界からも参加できるこの取り組みを体系化して進めていることを紹介しました。

自分と他者、過去との境界を越えることは核なき世界につながる思想~岡村幸宣氏

「中高生が原爆の図の前に立つとき、『自分の痛みと同時に、弱い立場の人の側の痛みに想像力を広げる必要がある』という丸木夫妻の思いを伝えています。彼らの暮らす現在の日常と、目の前の絵をどうしたらつなげていけるか、そういう思いを込めながら説明をしています」と岡村さん。「自分と他者との境界、線引きを乗り越えていくということは、いつの時代でも重要な課題であり、それは秋葉さんの『核無き世界につながる思想』。それを原爆の図からくみ取ってほしい。具体的な平和運動の取り組みへの思いを深めていく機会になればうれしい」と結びました。

原爆の図丸木美術館学芸員の岡村幸宣さん

生活に根ざした生協が「平和の循環」を担う~クロストークにて

「二度と戦争を起こさないために、平和の大切さの再確認や運動のうねりをどう作り広げていくか」をテーマに意見交換を行いました。

秋葉さんは、生協は「生活」に根ざし豊かさを追求する組織であり、そこが「二度と戦争を起こさない」「核なき世界をつくる」ための鍵になること、「生活」は人間の存在意義そのもので、それを基本に据える生協は、人間にとっていちばん大事な活動をしている組織と評価しました。

そして「生活に政治は深くかかわっており、『生活の一部』ということが人々のなかに落ちていけば取り組み方も変わるのでは」と言います。例に挙げたのが全自治体が作成義務のある国民保護計画で「全ての自治体が広島と同じ内容~『核攻撃があれば、(途中略)唯一市民を守る手段は核兵器を廃絶することだ』に改定すれば政府を動かすことは可能。それには市民の力が重要となる」と説きました。

岡村さんは「災害などさまざまな厳しい状況のなかでも生協は、人や地域とのつながりをずっと保ち続ける強さがあると感じている」と言います。パルシステム埼玉が丸木美術館訪問の取り組みの他、ホームページで寄付やピースウイークなどを広報(※1)していることを紹介し、市民レベルで地域との絆を深め継続することは「平和の循環」の鍵となり、その役割を担うことにつながると期待を込めました。

藤田委員長は、パルシステムグループで取り組んだヒバクシャ国際署名について、28万2,701筆と報告しました。(グループ全体の取り組みで2020年6月時点、24万3,510筆。2019年度に東京と千葉の独自取り組み3万9千191筆の合計)

最後に地域活動委員会の苅宿亜基子副委員長(パルシステム埼玉常任理事)が、「パルシステム平和の願い」(※2)を読み上げ、「平和とくらしを大切にする生活協同組合として、その大切さを広く呼びかけ、多くの人々と手をつないで二度と戦争を起こさない」と決意表明し学習会が終了しました。

※1

原爆の図丸木美術館」が寄付を呼びかけています
戦後75年企画 「ピースウィーク 」 平和について、学び、考えてみませんか?

※2

パルシステム平和の願い(8月13日にパルシステムグループ各理事長連名で声明発表)