未体験の超々高齢社会に突入 “生協ならでは”のお役立ちを学ぶ

2020年3月10日

パルシステム共済連とパルシステム連合会は2月13日(木)、東京・新宿区の東新宿本部で、これからの社会、地域に必要とされる生協の役割を考える講演会を開催しました。

インフォーマルサービスの重要性

日本の高齢化率は現在29.1%と増加の一途をたどり、かつて経験したことのない領域(超々高齢社会)へ突入しています。また生産年齢人口減や少子化の歯止めも難しいなか、パルシステムでは早い時期からインフォーマルサービス(※)の重要性を認識し、会員生協では様々な取り組みを拡げています。

※インフォーマルサービスとは――介護や医療保険で提供される公的なフォーマルサービスの対義語。特に地域包括ケアシステムの中では掃除や調理などの家事や、外出、食材配送など、くらしを支援する多様なサービスのこと。

地域活動を担当する組合員や役職員、たすけあい活動委員会(共済連)及び、地域活動委員会(連合会)関係者など58名が参加。総合福祉事業推進室から10年後の組合員のくらしや社会変化の報告のあと、福井県民生協の竹生正人(たこうまさと)理事長より、組合員の生涯利用と地域へのお役立ちについての実践や基本となる考え方を学びました。

会場のようす

開会あいさつで梅原隆子たすけあい活動委員会委員長(パルシステム山梨理事長)は、「学校から帰ると隣のおばあちゃんが留守番していたり、お葬式はご近所みんなで見送った思い出があります。今ではなくなってきているこうしたつながりを、生協が埋めることはできないか。福井県民生協の取り組みから学べればと思います」と述べました。

続いてパルシステムグループ1都10県組合員の年代別利用状況について、総合福祉事業推進室長の沖倉紅児が報告しました。「生涯利用していただけるよう『食』だけでなく、くらしの安心やサービスの強化、健康的な食生活や運動や社会参加ということでも支えていく事業・活動が必要になっています。今後、急増する後期高齢者となる組合員にも必要とされる生協であるため、パルシステムらしい福祉事業の追及もとても重要です」と話しました。

“子育てから生涯利用”の組合員づくり

福井県民生協の竹生理事長は「福井県は3年連続『幸福度№1』ですが、それを支える三世代同居が崩れ核家族化が加速しており、介護や子育て支援のニーズの高まりが一気に噴出してきているのが現状。そのため、組合員密着という強みで、その課題を解決していく主体、事業者になることが協同組合としての役割ではないか」と口を切りました。また、組合員を増やすことも大事だが、人口減少のなかで、今いる組合員に長く続けてもらうための事業やお役立ちを課題としていることも話されました。

福井県民生協の竹生理事長

具体的な取り組みについて内部では、組合員や地域の様子を組織全体で共有する。そのため組合員データの見える化や組織を横断化するしくみを構築。また今までの宅配、店、共済、福祉など個別な働きかけを“生涯”でつなぐ「生涯組合員づくり」、子育て支援や福祉事業の自立支援型への転換など、さまざまな工夫がみられます。保育事業については「預けるだけなら民間でもいい。私たちは核家族化で難しくなった子育ての知恵の継承や、子育て力を高めるという観点で取り組んでいます。福祉事業にしても上げ膳据え膳になっている状況で、それが果たして生協の福祉なのか。自立を主眼にし、それを助けあうしくみが生協の福祉ではと考え進めています」。

「事業のネットワーク」で新しい価値を創造

さらに農業を元気にすることは地域の元気につながるが、JAだけでは解決できないところまで来ていると、JAと協同で栽培や、また加工場も作り、組合員や地域で消費してもらう地産地消を実践。組合員の課題は地域の課題そのものという考えから事業やネットワークを編成し、移動店舗、買い物バス、食事宅配なども行っています。

「『事業のネットワーク』で新しい価値を作り出し、組合員へ生涯利用、地域には持続可能な貢献、これが社会的価値を押し上げていくことにつながると考え、組織全体で取り組んでいます」と締めくくりました。

藤田順子地域活動委員会委員長(パルシステム神奈川ゆめコープ理事長)は「福井県民生協は組合員や地域が求めていること、くらしにあわせた事業を進めていて、頼もしくて優しい、入りたい、つながりたい生協だと思いました。同時に私たちも、そんな風に地域や組合員から思われるような生協づくりをしていかなくては。今後も追求していきたい」とまとめました。