パルシステムらしい居住支援の構築で 共生の社会づくりを推進
2020年1月21日
パルシステム連合会は12月12日(木)、東京・新宿区の東新宿本部にて居住支援の先駆的な組織㈱あんどの西澤希和子共同代表を招き、支援の現状や課題について学び深めました。
パルシステムグループでは「心豊かな共生の社会」を理念に掲げており、教育格差や居住差別などから生じる貧困の連鎖と格差の拡大が取り組みの支障になるとして、学費助成制度と居住支援に取り組んでいます。
人権としての「住まい」を考える
居住支援に関しては「住宅セーフティネット法」が2017年10月に施行されて以来、生活要配慮者(※1)対象の起業が高まり、パルシステムは国土交通省住宅局から居住支援法人の全国組織「一般社団法人全国居住支援法人協議会」(※2)事務局の要請を受け、国交省と厚労省が横断的に連携できる枠組みの構築に参加しています。
今回の学習会はさらなる貢献や推進を模索し、実践につなげるために、居住支援や不動産と福祉の連携等に精通した㈱あんどの西澤さんを迎え開催し、役職員、組合員あわせて43名が参加しました。
(※1) 高齢者、障がい者、子育て世帯、被災者、低額所得者
(※2) 居住支援の強化に取り組む居住支援法人、及び法人をめざしている団体等に、国の施策の相互交流や研鑽の機会の提供等行っています
開会あいさつで地域活動員会の藤田順子委員長(パルシステム神奈川ゆめコープ理事長)は、「『住まいは人権』ともいわれますが、持てない人が増え生活も脅かされている社会状況です。そんななか、国土交通省から居住支援団体を束ねる事務局の要請をいただき、パルシステムも居住問題について関わらせていただいています。今日は課題を学び、何が実践できるのかを考えていきたい」と述べました。
地域連帯型自立支援活動の展開
全国居住支援法人協議会の事務局を受託する「くらしサポート・ウィズ(※3)」理事長・吉中由紀さんから、居住支援法人を広げるため全国で研究会や研修会等を開催し、情報発信や国や行政への提言を行っているなど、協議会の紹介がありました。
(※3) 東京都・生活クラブ・パルシステム連合会が、社会的な課題を解決するために組織を超えて設立した団体。2019年8月15日に東京都より住宅確保要配慮者居住支援法人に指定され、東京都では22番目
家賃保証だけでは救えない。「福祉」が重要
㈱あんどの西澤さんは、不動産会社を営むなか、生活要配慮者にかかわる機会が増え、その解決策を他に役立てられないかと考えたことが、居住支援にかかわるきっかけだったそうです。
「法律ができ制度化され、住宅ストックもありながら、東京都登録住宅857戸のうち、空き家は63戸しかない状況。それは家賃の不払い、高齢者の突然死、障がい者の対応など、不安やトラブルを避けたい、また改修費を負担するオーナー側のメリットが低いこともあり、求められる登録物件が増えない状況でした」
福祉と住まいは二人三脚で、「貸す側」と「借りる側」両者の安心が大事だと西澤さんは強調します。
「居住支援には福祉的なアプローチが同時に必要です。不動産と福祉のプロがタッグを組むことで初めて居住支援が利用者にとって有効で安心になります。この思いで作ったのが『あんど』です」
安心して住み続けてもらうために、高齢者住宅財団と家賃保証の商品を考案したり、地域の人たちにかかわってもらえるよう参加を提供したりと、歩みが止まりません。「障がい者でも手帳を持たない、相談支援専門員さんが付いていない人がとても多いのです。居住支援の前にその手続きを、と思っても断られることが多々あり、障害者相談支援事業の免許も取得しました。全国にこうした取り組みが広がり、住宅困窮者を応援したい」と思いを語りました。
パルシステムらしい住まいでの地域貢献を模索
講演後の質問では、建築基準法改定前の耐震等が不十分な空き家の耐震検査や改築費といった課題、いろいろな問題を抱えた人が住まいは実現しても、そのあとはどうなるのかといった現実的な内容が出されました。
西澤さんは前者について、北海道・本別町では数件まとめて耐震検査を行うことで費用が抑えられた例を、後者に関しては、まず住まいの近くに医療や支援施設があり、支援してもらえるかを確認し、そこで長く暮らせることを第一に進めていることを紹介しました。
閉会あいさつで地域活動委員会事務局長(当会執行役員)の談麗青は「パルシステムは多様な社会的課題解決、地域における助け合いの仕組みづくりに大きな役割を果たす組織として、さまざまな団体・行政から期待されています。居住支援はパルシステムの未チャレンジ分野であり、独自のモデルづくりを推進するため、公益性を持つ非営利法人の『くらしサポート・ウィズ』に運営委託しました。今後、居住支援の取り組みについて、広く情報発信していきます。協同組合の価値である地域共生社会の実現、生活困窮世帯の自立に向けて、パルシステムらしい住まいの基盤構築を進めます」と今後を展望し会を締めくくりました。
※一部表現を修正しました(2020/1/21更新)