「原爆の図」を展示し平和学習会を開催 未来の平和をみんなでつくる
2019年7月29日
争いのない世界を次世代に
パルシステム連合会の地域活動委員会は7月11日(木)、東京・新宿区の東新宿本部で、平和学習会を開催しました。当日は丸木位里さん・丸木俊さんによって描かれた「原爆の図」第3部≪水≫の原寸複製画を、「原爆の図 丸木美術館」(埼玉県)よりお借りし、会場に展示しました。
2017年「核兵器禁止条約」が国連で採択され、成立に尽力した核兵器廃絶キャンペーン(略称ICAN)がノーベル平和賞を受賞するなど、核兵器廃絶への動きは加速しています。しかし唯一の戦争被爆国である日本は条約交渉に反対し、現在も参加する意思を示していません。パルシステムは、平和とくらしを守り、争いのない世界を次世代に手渡すために、私たち一人ひとりができることを呼びかけています。
3人のゲストによるトーク
祖父が原爆被害にあった広島県出身の森山景さんは、丸木俊さんを主人公にした評伝劇を作・演出しています。2018年12月出航のピースボート第100回クルーズには「おりづるユース特使」として参加し、船で原爆・原発をテーマに演劇プロジェクトを立ち上げました。証言活動のために乗船していた在ブラジル被爆者の渡辺淳子さん(2歳で被ばく)から、得たものは大きかったといいます。「たとえ被ばく時の記憶がなくとも、事実が忘れ去られないよう、継承していくことに意味がある。戦争体験はこれからを生き抜く知恵を学んでいるのだと思います。被爆者の口を閉ざしてはいけません。どういう言葉や姿勢なら未来に残るのか、考え続けています」(森山さん)。
直接被爆者ではなかった位里さんと俊さんが30年以上にわたって描き続けた「原爆の図」(全15部)について、丸木美術館の学芸員・岡村幸宣さんが、「記憶は変容する」と掲げ、紹介しました。「『原爆の図』は“他者の記憶”を描いた絵画であり、歴史的現実を絵画に着地させる試みでした。自由なメディアがゆえ、想像と真実の狭間で議論されてきた作品です。さまざまな表現者たちと積極的にかかわり『伝える』ことを追求していきたい」(岡村さん)。
アメリカ出身の詩人、アーサー・ビナードさんも「原爆の図」に衝撃を受けた作家のひとりです。約7年をかけて、作品を編みなおし、日本独自のメディアである紙芝居として『ちっちゃい こえ』を刊行、会場で披露しました。「ピカ(原爆)にさらされた生きものの声に寄り添って『原爆の図』は描かれています。それを新しい表現で切り拓くことに挑戦しました」(アーサーさん)。
平和を語り継ぐことの意味
クロストークでは、「伝える、巻き込む」というキーワードが表出し、平和について語り継ぐ意味を確認しました。「語り継ぐということは、先人たちのためじゃない。僕らのため」とアーサーさん。「僕らがそれをやらなかったら、深まらない人間で終わってしまう。摩擦は決して楽しくはないけれど、何もしないのは思考停止と同じ。巻き込んで、ぶつかりあって、新しいものを作り出していくほうが、よっぽどいい」。岡村さんは「『原爆の図』の特徴は、人間、いのちを描いたこと」と挙げ、「こんな(悲惨な)状況の中でも生き続けたいのちを描いた。これは戦争の時代だけの話じゃなく、公害、基地問題、原発、差別、いじめ、貧困など、いまの時代の中にも通じる“本質”がある。そこを意識しながら、若い世代、新しい出会いを作り出していかなければ、と思っています」と話しました。
パルシステムと平和活動
ヒバクシャ国際署名は、「生きているうちに、何としても核兵器のない世界を実現したい」と、平均年齢82歳を超えた広島・長崎の被爆者が始めた署名活動です。
2017年に「核兵器禁止条約」が国連で採択され、核兵器廃絶への動きは加速していますが、条約に賛成した各国で批准が進まなければ発効できず、今後の取り組みが重要になります。
パルシステムは、2020年度まで署名活動を行います。ぜひ、ご協力をお願いいたします。
生協パルシステムの情報メディア KOKOCARA(ココカラ)|「原爆の図」を7年がかりで紙芝居に。詩人アーサー・ビナードさんが伝えたかった「ちっちゃい こえ」とは?