民意が正しく生かされるか。「国民投票法」を学び、考える。

2019年4月25日

パルシステム連合会の地域活動委員会は4月11日(木)、東京・新宿区の東新宿本部にて、シンクタンク「国民投票広報機構」代表の南部義典さんをお迎えし、憲法学習会を開催しました。当日は会員生協での動画配信による視聴を含め、72名が参加しました。

2007年5月に成立・公布された国民投票法のもと、憲法改正原案の審議を行う憲法審査会が2011年10月、衆参両院で動き出しました。国会での改憲論議の先行きが不透明ななか、5月3日の憲法記念日を前に、憲法改正の国民投票法について学ぼうと、改憲手続き研究の草分け的存在で、その後の動きにも精通した南部義典さんに、成り立ちや課題についてお話しいただきました。

三権の番人は私たち

「憲法改正を煽る風潮のなか、私は国民投票法の問題点や課題を指摘し、現在のルールでは投票は実施できないことを伝え、共有に努めています」と南部さんは切り出し、憲法を取り巻く情勢にも目を向けることが大切と指摘します。「憲法記念日が近づき、メディアはいろいろな議論を打ち出すと思いますが、国民の人権尊厳を掲げる憲法の番人は私たち。常にその自覚を持ち国会、内閣、司法の動きを注視することが重要です」と話しました。

「国民投票法」と課題~テレビCMの危惧

次に選挙と国民投票との違い、および国民投票法の課題を複数の視点から紹介。国民投票法は公職選挙法のように「さまざまなルールや規制がなく、経費の上限も収支報告の義務もない。また、運動期間が最長180日と長く、この期間の過ごし方も問題」と指摘しました。「とにかくなんでもできるに尽きる」と南部さん。

課題については、「20歳を上限とする少年法との関係」「各自治体への執行経費」「運動費用やCM規制のあり方」「賛成の得票率が低い場合の成立要件」など、その他にも山積みで、また初めての国民投票であることから「前例となるので特に留意する必要がある」と訴えました。

なかでもCM規制に関しては、会場の組合員から「広告出稿数が無制限なら、潤沢な資金を持っている人たちが、選挙期間中に主張を放映し続ける可能性もあるのでは」と危惧する声が出されました。南部さんは「イギリス、フランス、スイスをはじめ、諸外国では全面禁止が多くなっていますが、日本では未整備です。たとえば人気のある芸能人などを採用すると、影響力は多大と思いますし、議論が必要」と応じました。

憲法の目的・本質を理解する

今の状況について「新しい車両のイメージばかり話して、絶対に必要なレールの議論がまったく抜けている、気づいてすらいないこともある状態です。だれもが納得できる合意を抜きに今の段階では憲法改正の国民投票を正常に執行することは難しいと思うのです」と南部さんは話します。「憲法の最高目的は『個人の権利や尊厳、自由を保障』すること。この本質はこれからも変わりません。今後も課題を共有し合意形成に尽力したい」と述べました。

組合員からは「国民投票法ができていたことも知らず、また発議後の過程は聞く機会もなく、想像もしていなかった」「他の法律との矛盾や不備など、詳細な解説に危機感を覚えました」「正しく判断していくために、引き続き学んでいきたい」などの発言が上がりました。