すべての人が人間らしく生きるために 農福連携は共生の社会を生み出すカギ

2019年4月2日

パルシステム連合会は3月14日(木)、東京・新宿区の東新宿本部で、地域活動委員会主催拡大学習会「産直産地における農福連携の取り組み」を開催しました。

地域活動委員会では学習会や調査、ヒアリングなどを通し、「農福連携」の意義や課題など学びを重ねてきました。学習会には組合員や役職員59人が参加し、スタッフの受入れや連携方法が多岐にわたること、連携の先には地域の活性化やパルシステムの理念でもある「共生の社会」へつながっていることを確認しました。

講演に先立ち、パルシステム連合会常務執行役員・髙橋宏通があいさつし「農福連携の取り組みは、第1回『ジャパンSDGsアワード』SDGs推進副本部長(内閣官房長官)賞受賞で評価された、パルシステムの『共生の社会づくり~誰一人取り残さない社会~』に通じるものがあります。産直産地で障がいや就労困難なみなさんたちが手をかけた、かけがえのない農産物が届いていることを組合員や消費者にもっと知ってもらい、取り組みが他の産地にも広がっていけば」と述べました。

講演は雇用形態、内容、規模などの異なる以下の3産地から報告がありました。

左から、嶋田清治さん・陽子さん(村悟空)、上野さん(大紀コープファーム)、新井さん(埼玉福興)

就労支援の場~農事組合法人村悟空・生産者 嶋田清治さん・陽子さんご夫婦

生産者個人で、障がい者の就労支援。施設外作業所(就職への訓練の場)としての位置づけ

当初取り組んだ際の失敗や問題を施設の担当者に率直に伝え、障がいの程度に応じた工夫を双方で検討しながら始めた結果、周年作業ができるまでに。ノルマを決めず、選別も基準を明確化するなどプレッシャーや不安に配慮。就職の訓練の場なので2~3年すると来なくなり、さみしさもあるが、ここから巣立つことに誇らしさやうれしさを感じる。今後は作業場の環境整備、作業のスキルアップなども双方で検討しながら、就業支援にできる限り取り組んでいきたい。

生活して働く、働いて生活する場~埼玉福興(株) 新井利昌さん

ソーシャルファーム(※)の概念で社会的就労困難者の働く場を創出。グループホームと就労継続支援B型事業所。どんな障がいや経歴でも来る者を拒まずの精神

寮でいっしょに生活しながら、農業で社会的に自立できるよう試行錯誤。福祉という範疇でなく障がい者や就労困難者も得意分野の分業、仕事作りなどで、食料生産の担い手となれる。消費者に喜ばれるより良い野菜作り、農業で地域再生、社会にも貢献できるよう、農業の担い手としてしっかり生きていけるようにしたい。国や行政からの補助を、企業全体で返していくこともソーシャルファームとしてのポイントになるかなと思う。

雇用と職場体験~(有)大紀コープファーム 上野由香さん

専任者を配置し、障がい者の委託訓練・就労や地域若者サポートステーション登録の就労困難者の職場体験等に取り組む

働きづらさを抱えている人は、障がい者の作業所のような就労訓練の場がないため、その中間的就労を支援している。農業はすべての作業を機械化するのは難しいので、そこに人の手が入る余地が多々あると思う。障がいや就労困難があっても、特性を見極めマッチングさせ、その就労を通し地域社会の一員として自信を持ち生活することは、地域の活性化、ひいては産地の継承にもつながっていくと考える。

会場の参加者からは、多くの質問が上がりました

地域活動委員会の田原けい子委員長(パルシステム埼玉理事長)は、「それぞれの産地が、“その人らしく仕事し、幸せに生きるにはどうすればいいか”を基本に据えていることに共感しました。共生の社会をめざす私たちに大事なヒントになったのでは。障がいの有無にかかわらず、みんなで、人間らしい生き方を追求すれば世の中は変わるはず」とまとめました。

※ソーシャルファーム(Social Firm)
すべての人が社会で孤立したり排除されたりすることがないよう擁護し、社会の一員として包み支え合う(社会的包摂)という理念のもとに、障がいのある人や何らかの理由で働きたいのに働けないでいる労働市場で、不利な立場の人たちを雇用するためにつくられた新たなビジネス形態。