生活困窮者自立支援について学習会を開催 「ともに生きる」を考える
2018年9月25日
パルシステム連合会は9月17日(月)、東京・新宿区の東新宿本部で、生活困窮者自立支援の実践事例についての学習会を開催しました。
平成27年4月に施行された生活困窮者自立支援法は、全国各地の取り組みを反映させて今年6月に改正案が成立しました。国の制度として整備されつつある生活困窮者に対する自立支援の現状について理解を深めようと、当理事会主催で学習会を開催しました。
パルシステムグループでは生活困窮世帯への奨学金制度の創設など、支援の具体化を視野に入れており、今回は役職員が知見を深めることを目的として48名が参加しました。
貧困と学力――寄り添えば子どもは変わる
一部の講演には、埼玉県をフィールドに若者の学習・自立支援を行う一般社団法人 彩の国 子ども・若者支援ネットワークより白鳥勲代表理事が登壇しました。当団体は埼玉県の生活困窮者自立支援制度「アスポート」事業を担っており、県内約100カ所で1,600人の子ども・若者を、ボランティアを含む1,000人の大人たちで手厚くサポートしています。
「いま7人にひとりの子どもが生活困窮世帯でくらしています。特にひとり親世帯の貧困が深刻で、貧困と学力の相関は顕著です。幼児期から『健康で文化的な生活』とはほど遠い生活をしてきた子どもたちに対して『自分を大切にしてくれる大人がいる』ということを、時間をかけて寄り添い、伝えるのが私たちの活動です。すぐに変化は起こらなくとも、必ず子どもは変わります」(白鳥さん)
「貧困の連鎖を容認する社会的な意識が広がっている」と白鳥さんは警鐘を鳴らします。今後は埼玉に拠点を置くパルシステム埼玉や、配送や印刷業務を担う子会社・㈱パルラインが当団体を訪問し、具体的な連携について模索していく予定です。
居住喪失を地域で防ぎ、自立を見守る
二部の講演には、福岡県を拠点に「ホームレスからの自立」を推進する、認定NPO法人抱樸(ほうぼく)の奥田知志理事長、国土交通省住宅局の大島敦仁企画専門官から、生活困窮者などの自立を支援するための「住まい」を中心とした制度整備について話がありました。
抱樸では債務保証会社と提携するなど、助成金に頼らない民間連携型の居住支援をすすめています。「住宅確保」と「生活維持」の一体的なサポートが特徴で、誰の受け入れも拒まず、生活破綻を未然に防ぐことに注力しています。
「日本では住所地が信頼のベースとなっているため、住まいがないと社会手続きが一切できなくなります。住宅の確保が難しくなっている人が増えているなか、そうした方の社会参加や自立を促すためにも居住喪失を防ぐ枠組みが必要です」(奥田さん)
多様なNPOと連携しながら自立支援を展開し、ボランティアセンターには1,500名を超す登録があるなど、地域ぐるみで「生きづらさ」を抱える人たちと向き合っています。高齢化の進行により、今後ますます「高齢単身世帯の住居確保が難しくなる」と奥田さんは言います。家主の大きな不安要因である亡くなった場合についても「家族以外の人が葬式を出せるしくみ」として互助会(なかまの会)の運営にも精力的です。
国土交通省では高齢単身世帯の増加や若年層の収入低下など人口減少化における空き家・空き室を活用した「住宅セーフティネット」(昨年法が施行)機能の強化を掲げています。
「専用住宅の改修、入居への経済的支援などを行います。各都道府県が指定する『居住支援法人』が住宅確保要配慮者に対して、情報提供や相談、生活支援などを担うしくみの整備を進めています」(大島さん)
生協として課題に向き合う
これらを受け、パルシステム連合会専務理事・渋澤温之は「貧困など、くらしに困難を抱える人たちに対して、生協としてどういう解決が提示できるか、具体的に着手しないと難しい時期に来ていると考えています。国・地方自治体はもとより、地域で活躍するさまざまな団体と一緒になって、勉強しながら進めていきます」と結びました。
国連や日本政府は、持続可能な開発目標(SDGs)実現へ向け、協同組合を「役割を果たすべき民間セクター」「連携するステークホルダー」と位置づけ、市場原理だけで解決できない課題への社会的機能として協同組合に期待しています。
協同組合の一員としてパルシステムは、理念「心豊かなくらしと共生の社会を創ります」に基づき、「誰ひとり取り残さない」を念頭に、生活者同士の信頼関係構築をベースとした社会づくりを進めていきます。