TPP交渉差止・違憲訴訟控訴審 「命とくらしを守る」第一回目の口頭弁論
2017年11月10日
パルシステムが協力する「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」による控訴審が、11月8日(水)に行なわれました。東京地方裁判所には傍聴希望者が訪れ、門前集会、報告会も開催されました。
「極めて形式的」な判決に対する控訴審
「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」は2015年1月に設立しました。パルシステムグループも、産直産地の生産者をはじめとする関係団体と協力し、活動を応援しています。訴訟は5月15日、原告1,055名にて提訴され、8月21日には原告527名による第二次提訴が行われました。判決は2017年6月7日に言い渡され、充分な議論や審査もないままに退けられました。今回は、それに対する控訴審の第一回目であり、裁判に先立ち裁判所前では門前集会、終了後は衆議院議員会館で報告会を開催しました。
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)をめぐっては、米国が離脱を表明した後も、日本政府は発効を目指して他の国々に働きかけています。控訴審の同日8日からはベトナムのダナンで、TPP協定に参加する11カ国による閣僚会合が行われ、離脱を表明したアメリカを除いた国での合意に向けて、日本政府が主導的に働きかけました。
控訴審では、今年3月に可決された種子法廃止法案のほか、食品安全規制の緩和、水道法改正の動きなど、TPPが発効していないにもかかわらず、グローバル企業による公的領域への参入を促進する関連法案の整備が着々と進んでいることなどを指摘し、証人申請しました。被控訴人である日本政府からは「1月を目処に意見を準備する」と回答を得ましたが、裁判長は結審を言い渡し、すぐさま原告弁護団が裁判長の忌避を申し立て、審議は終了しました。
特許種子による農家収奪を憂慮
本会と原告弁護団は、終了後に報告会を開き「問答無用の判決であり『憲法の番人』として司法の責務を放棄しています。私たちの訴えに対し、政府が反論すると言っているにもかかわらず、それを無視して司法が裁判を打ち切るなど、言語道断です。力が抜けるような思いですが、これは『命』の裁判であり、子どもたちの未来を守るために、あきらめるわけにはいきません」として、今後の情勢にあわせて対策を練っていく考えを示しました。
この日は食政策センター・ビジョン21の安田節子さんが講師となり「多国籍企業のための種子法廃止と食の安全規制緩和」についての学習会も開催されました。安田さんは「政府は、種子法廃止に合わせて農業競争力強化支援法も通し、グローバル企業に種だけでなく、公的機関で蓄積してきた新品種の育成や種苗技術、その施設までも提供するように推し進めている状況です。遺伝子組換えの国内生産も本格的に始まろうとしており、特許種子による農家収奪を憂慮しています。BSEや農薬残留基準の緩和なども着々と進んでいるのが現状です」として、「なぜ日本の基準に合わせず、日本が基準を緩めてまで、安全性の低い輸入を受け入れなければならないのか。不公正な貿易協定はいりません」と訴えました。
本会の幹事長、山田正彦・元農林水産大臣は「『TPPは発効されていないし、関連法案もまだ』ということで、訴えを棄却する判決が6月にあったわけです。しかし着々と、法の整備が進んでいます。たとえば、アメリカとFTA協定を結んでいる韓国でさえも許されていない、遺伝子組換え米の試験栽培が日本で始まっています。TPPは動いています。国産だから安心、とはならない、選ぶことすらできない時代がもうそこに来ています。なんとしても勝たなくてはいけないのです」と、引き続き裁判に取り組む決意を表明しました。