「地域づくり基金報告会」を開催 地域の再生と持続可能な社会づくり 多様な6団体が発表

2017年8月8日

パルシステム連合会は、7月28日(金)、東京・新宿区の東新宿本部で「地域づくり基金報告会」を開催しました。助成を受けた団体から代表で6団体が、基金活用の事例や取り組みを発表しました。

パルシステム連合会の「地域づくり基金」は、大規模災害からの復興支援や食と農をつなぐ活動、地域の環境保全活動などを資金面で助成することで地域の復興・再生を支援し、日本の持続可能な地域社会づくりと農林水産業発展に寄与することを目的に運営されている制度です。地域づくり基金運営委員会(委員長:石川弓子・パルシステム茨城理事長)で審査し、2016年度は75団体へ総額18,537千円を助成しました。

7月28日の「地域づくり基金報告会」では、そのなかの6団体が活動を発表し、うち遠方の山梨、長崎、福岡の3団体からは動画で報告がありました。

 

報告団体集合写真

当日報告者のみなさん

発表に先立ち、石川運営委員長の代理で連合会・吉中由紀副理事長(パルシステム神奈川ゆめコープ理事長)が、「各会員生協での助成もあわせると2016年度は224団体、5,147万円にのぼります。どれも価値ある活動へ助成できており、非常に地域のなかで活かされていると実感します。パルシステムの理念の実現に、地域の団体のみなさんと取り組んでいきたいと思います」とあいさつしました。

続いて、下記3団体のみなさんから発表がありました。

再生したみかん畑の育成と整備

有限会社ジョイファーム小田原(神奈川県)

10年以上耕作放棄されたみかん畑を組合員とともに再生するにあたり、駐車場やほ場への道の整備、交流ハウスやトイレの設置などに基金が使用されました。組合員との植樹や交流は年ごとに増え、昨年は時期をずらし収穫できるさまざまな品種を500本ほど植樹。いつ来ても楽しめるよう産地の配慮です。この活動は神奈川以外の会員生協も参加。5~6年後の収穫まではひたすら草取りですが、継続することで小田原の農業の衰退を食い止めたいと、長谷川功代表は話します。

ジョイファーム 交流ハウス

交流ハウスにて

若年無業者支援のための居場所事業

特定非営利活動法人 文化学習協同ネットワーク(東京都)

みんなで食事やお弁当を作り食べることも活動の一つですが、台所が古く使いにくい、お湯が出ないなどの不便がありました。この基金を知り、申請に向け若者たちでプロジェクトを立ち上げ、いざ決まると予算の見積りや商品の検討、購入、設置など、仲間同士の力で改善を実現しました。文化学習協同ネットワークの雨宮健一郎さんは「基金が“待望のお湯”以上に彼らの成長の後押しとなった。居場所はあくまでもベースキャンプで、ここから社会や地域を担う人間として羽ばたいてもらうことが願いです」と語りました。

文化学習協同 シンク取替え

シンクの設置作業も自分たちで

「木質系バイオマス酵素醗酵土壌改良材」製造・販売事業

特定非営利活動法人 里山再生と食の安全を考える会(茨城県)

原木しいたけの植菌の際に出るおが粉を堆肥化し、環境に優しい優良な土壌改良剤を製造しています。それを安定的に製造するため、基金でパイプハウス設置や機材を購入し、製造環境を整えました。原木栽培は3.11原発事故で原木が汚染され、栽培の危機に直面。しかし生産者の涙ぐましい努力で続いています。そのおが粉で土壌改良剤を製造し、パルシステム関連農家に販売することで、資源循環型の環境に優しい農業への寄与を目指しています。

里山再生 堆肥ハウス

パイプハウス設置

里山再生 堆肥起こし

堆肥の切り返し

以下の3団体は動画にて報告いただきました。

五味醤油株式会社(山梨県)

8年に渡り「手前みそ」を広めてきましたが、基金で「手前みそ」教室で使う子どもにもわかりやすいスライドを作成し、大好評だそうです。「手前みそは自分や子どもの『食べる』ということを考えるきっかけになる」と五味洋子さん。洋子さんは母親から「遅刻しても味噌汁は飲んでいけ」と言われ育ったそうです。「食べることは人を作る基本だから」の思いを胸に、これからもスライドを活用し活動の幅を広げていきたいと語ります。

五味醤油 てまえみそスライド
手前みそスライド表紙(動画より)

五味醤油 てまえみそ講座

手前みそ教室のようす(動画より)

有限会社島原自然塾(長崎県)

「過疎地域における自然循環型農業をより推進するための設備投入」として排気ガス規制もクリアしているより環境に配慮した「人参浮かし機」を当基金で導入。農業経験がない人でも作業が可能となり、担い手不足解消の可能性にも期待できます。

島原塾 人参掘り起こし機

人参浮かし機による収穫(動画より)

株式会社大島むなかた牧場(福岡県)

宗像市の離島・大島に古くからある㈱大島牧場。担い手がないことを知った宗像市在住の薄一郎さんが、自然豊かな大島の牧場の景色を取り戻したいという熱い想いで㈱大島むなかた牧場を設立。基金では、広く起伏の激しい放牧地で草刈りできる機械の購入に充てました。共同事業者の山地さんは、「薄さんのように飼料を自給し、健康的に飼育することが島の自然環境を守ることにつながり、島民のためにもなると思う。それをやりがい、使命としてがんばりたい」と思いを込めました。

大島 くさかりまさおくん

草刈り機で草を刈る薄さん(動画より)

大島 島のこの風景、環境を守ること

牧場は一番の絶景地点。「この島の風景を絶やさないこと」(山地さん)(動画より)

すべての報告のあと連合会・野々山理恵子副理事長(パルシステム東京理事長)は、「基金をこれだけ多様に活用いただき、ほんとうにうれしいです。このつながりを、お金を超えた人と人のつながりとしてさらに広げ、“つながりの循環”の一歩にしていけたらと思います」とまとめました。

▽関連リンク
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