もんじゅ廃炉で明白に 「2050年実用化」に根拠なし
2017年7月21日
パルシステム連合会が呼びかけ団体として活動する「阻止ネット」(※)は、7月10日(月)、東京・新宿区のパルシステム東新宿本部にて、高速増殖炉「もんじゅ」廃炉についての学習会を開催しました。
パルシステムグループは、原発に頼る社会から自然と共生する社会への転換に向け、学習会や集会の参加、脱原発署名活動などに取り組んでいます。「六ヶ所再処理工場」に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワーク(略称:阻止ネット(※))の呼びかけ団体としても活動しています。
7月10日、阻止ネットでは、原子力発電に反対する福井県民会議事務局長の宮下正一さんと原子力資料情報室の伴英幸さんを迎え、昨年12月に廃炉が決まった福井県敦賀市にある「もんじゅ」についての学習会を開催しました。パルシステムグループの組合員や役職員、関係者など、56名が参加しました。
なんのためのもんじゅ?
まず原子力資料情報室の伴英幸さんが、日本の原子力政策について、「柱は増殖炉開発。当時は核兵器開発競争でウラン枯渇懸念もあり、資源小国の日本にとってプルトニウムが半永久的に電力を生み出してくれる増殖炉は格好でした」と切り出しました。
1956年、政府は「原子力開発利用長期計画」のもと開発を推進。当初は技術的に容易とされ1961年には確立の予定でしたが、計画が改訂されるたびに“実用化の見通し”は遠のき、1987年にはその表現を削除。“諸条件が整えば2050年頃から実用化”と大幅に先送りとなりました。
「高速増殖炉は技術的な問題は大きく、核分裂が急に進むなど原子炉が暴走しやすい。また、冷却材としてナトリウムを使用していて、空気中にもれると火災が起きます。実は開発していた国はすべて火災を起こし撤退しています。もんじゅも初発電に成功した4カ月後に火災が発生。それ以外にトラブルや1万点にも及ぶ点検もれなど問題続きでした」と伴さんは指摘します。
「もんじゅの発電は1995年に約40%出力しただけ。政府はもんじゅは廃止するが、高速炉開発は引き続き進めると言う。でも、もんじゅも高速炉。日本の高速炉開発の破綻はもんじゅで証明されました。世界で実用化できたのはひとつもなく、“2050年頃実用化”の根拠がないのは明白です」。また今後の廃炉作業にも「30年くらいでと言うが、ふげん(同県にある2003年廃炉の原子力発電所)はいまだに原子炉本体に到達していない」と懸念を示します。
「廃炉」は市民参加で
続いて原子力発電に反対する福井県民会議事務局長の宮下正一さんが、「もんじゅ闘いの歴史」につて説明。「福井には原発が15基作られ、それぞれで反対運動はあったのですが、『とにかくもんじゅを止めよう』と県民あげての運動や裁判にもなったのは、もんじゅの特殊性です。ウランはメルトダウンしても自然と収束しますが、もんじゅのプルトニウムは核分裂が促進し、核爆発が発生。そのうち炉そのものが吹っ飛ぶ。他の14基の原発に連鎖し大事故になり、放射能も、3.11の福島では太平洋にも流れたが、福井で起こると日本列島中にまわる可能性がある。廃炉はものすごく幸運だった」と宮下さん。
また、「廃炉は決まったが、開発時のような問題や隠蔽が起きないよう、国の監視に加え、市民の監視も入れ、いつでも問題を是正できるような体制をつくることが求められる」と強調します。処理が民間事業に委託された台湾では、原発の廃材でマンションが建てられ、被爆者がたくさん出たそうです。「誠意と熱意を持った技術者集団を育てることも重要。首都圏の皆さんも、今後も福井に心を寄せていただき、家庭を守り、地域を守っていくためにぜひいっしょに求めていきましょう」と結びました。
最後に、あいコープみやぎの多々良哲専務は、「廃炉が福井のみなさんの粘り強い監視、反対運動の成果であることがよくわかりました。これからも福井のみなさんに連帯し、ともに声を上げていきましょう。阻止ネットは11月に『もんじゅツアー』を企画しています。ぜひご参加ください」と訴えました。