みやぎ生協に学ぶ貧困・格差・社会弱者問題 解決の取り組み
2017年5月1日
パルシステム連合会は4月13日(木)、東京・新宿区の東新宿本部で学習会「みやぎ生協のくらしに困難を抱えた方への主なサポート事業について」を開催しました。
パルシステムは2016年4月に「地域連携研究会」(運動委員会主催)を設置し、社会的に問題となっている貧困・格差問題に対し、会員生協や地域団体と連携して情報交換や学習会、解決への研究等を行っています。2017年度も引き続き取り組みを深めていきます。
第1回はみやぎ生活協同組合の実践を、くらしの安心サポート部・小澤義春部長に学びました。みやぎ生協はメンバー(組合員の呼称)一人ひとりの安心で豊かなくらしを支えることはもちろん、くらしに困難を抱えた方へのサポートを、さまざまな取り組みや事業を通し進めています。
組合員の役に立つ生協事業とは
2008年のリーマンショックでは、宮城県内でも生活困難・困窮者が増加しました。当時、みやぎ生協組合員の県世帯の割合は67%で、組合員にも生活困難者が相当数いることが見通せました。購買事業以外で役に立つことを考えなくていいのかという議論が進み、取り組みにつながりました。
生協とは何か、みなで議論
主な取り組みは「コープフードバンク」「くらしと家計の相談室」「学習支援」「仙台・宮城生活困窮者自立支援共同体」「こども食堂支援」です。
「コープフードバンク」は2010年にみやぎ生協の事業として開始し、その後、東北全県に対象を広げるため、コープ東北サンネット事業連合に組織移行しました。寄贈希望団体は社会福祉協議会が圧倒的に多く、寄贈品の最近の傾向は災害備蓄品が増えています。
「くらしと家計の相談室」は生活相談・家計再生支援貸付事業を行っていて、2010年から信販会社と研究を開始。2012年にコープ委員会で組合員合意を図ったところ、「だらしなくて借金している人に、なんで私の出資金を使うの」などの理由で9割が反対。「家計に困難を抱えている人の状況をイメージできなかったのでは」と小澤部長は振り返りました。その後1年かけ丁寧に地区別説明会を実施。すると、「もともと生協は困っている人たちが助け合う組織で、組合員にそういう人がいれば助けるのは当たり前。それはまさに生協がやるべき事業なのではないか」という議論が組合員のなかで起きたそうです。
「とてもよかったと思っています。協同組合の原則を振り返り、組合員、職員とも“生協とは何か”をあらためて考えるきっかけになりました」と述べました。2013年度の総代会で提案し、3分の2以上の賛成で可決されました。相談者の組合員比率は開始当初60%、現在は65.7%で、「反対はありましたが、実際やってみると組合員が大半の利用を占めており、組合員のための事業になっていると理解しています」。(小澤部長)
「コープフードバンク」は活動が広がるほどお金がかかり、現在はサポーター制度や国の補助金などを充ててなんとか運営している状態だそうです。また「くらしと家計の相談室」は、事業のもとになるのはすべて貸し付けから生まれる金利。「貸付が主目的でありませんが、金利がないと事業は維持できません。最低限のくらしを守るための“セーフティネット事業”ということで割り切っています。どこからも借りられない、でも生協が貸すことで生活が再生できるのであれば、必要な貸付はしていきたいのです」。(小澤部長)
生活困窮に手を差し伸べるしくみを
小澤部長は最後に「生協だけでできることは限られているので、同様な取り組みをしている団体や、ミッションを持っている人たちといっしょにやっていこうというのが、みやぎ生協の考えです」とまとめました。
運動委員会の佐々木委員長は「貸付事業を1年かけ組合員同士の議論で合意を作ったのはすごいことです。生活困窮がいま責められる時代にあって、そこを見える化し、手を差し伸べるしくみを作ることが生協の今の課題だと思います。これまで以上に地域での連携を強め、今年もまた視察や情報収集、学習を強めたいと思います」と感謝の意を表しました。