「パルシステムの産直」――産地の危機は産直の絆を深める礎に(2016年12月)

2016年12月6日

シラタ米を通して

2016年度の稲刈りツアーにて(JAささかみ)

食べる側にとって新米の収穫期は心躍る季節ですが、生産者にとっては期待と不安が入り混じる時季。収穫された米の品質が、1年の生活を左右するからです。生産者と消費者をつなぐ生協も、同様に産地の状況を把握するまで手放しでは喜べません。

新潟県の産直産地・JAささかみとJA北蒲みなみでは昨年、台風の影響で高温による生理障害が出て、米が白濁する“シラタ米”が多発しました。通常、収量の5%以下という年がほとんどですが、昨年は15~20%という状況。シラタ米は、炊き上がりの見た目や食味に大きな影響は与えませんが、比率が高まると等級が下がり、取引価格に響きます。一般の取引では「いりません」と、買い取らなければ解決するかもしれません。しかし、組合員と生産者が暮らしを支え合うのが「パルシステムの産直」です。組合員のために栽培してもらった米の出来が悪いからと引き取らなければ、生産者はたちまち困窮することになります。

2016年9月2回の産直情報紙『産直通信』では、産地応援企画「新潟こしひかりアウトレット」として、シラタ米についてていねいに伝えながら、利用を呼びかけました。結果はパルシステム東京のおすすめもあり、1週間で6,534点もの受注。商品にはお礼文を入れたシールを貼って供給しました。

【9月2回『産直通信』でのアウトレット企画】

9月2回『産直通信』紙面

商品に貼付された『エコ・新潟こしひかり(無洗米)アウトレット 3kg』シール

JAささかみの清田壽一(せいたひさいち)組合長は、「生産者は『納得できる価格で販売できるか』『売れ残るのでは』と心配でした。組合員が理解し、注文してくれたことに、長年取り組んできた産直の重みを感じます」と語りました。JAささかみとパルシステムは、食管法規制下の時代から40年以上、産直を築いています。リスクもおいしさも分かち合う関係が、シラタ米への理解と注文につながりました。

近年の天候不順は、米の生産現場だけでなく、青果も含め大きな不安をもたらしています。パルシステムでは、これまでも産地の危機の際、買い支えや募金などで応援してきました。以下3つの事例を紹介します。

産地の危機を救った過去事例

〈2008年 ひょう害〉

りんごが豊作でしたが、青森県ではひょう害のため大量の傷つきりんごが発生し、パルシステムは「ひょう害りんご」企画や、ほかのりんご産地も青森のりんごの優先企画に協力するなど、生食用供給を応援。また加工となったジュースの利用を呼びかけ、PB商品は4倍、NB商品も加工が深夜におよぶほどの利用がありました。この産地の危機で、「買うことしかできないけれど応援します」(組合員)、「『助け合う、支え合う』生協の原点を実感した」(職員)など、産直の絆をさらに深める礎となりました。

(左)ひょう害を受けたりんご(八峰園)/(右)ひょう害を受けたりんごを原料にしたPB商品『ストレート果汁青森のりんご』

〈2010年 寒波と強風〉

3月から4月にかけて日本各地を襲った寒波と強風の大被害で、神奈川県のジョイファーム小田原や奈良県の大紀コープファーム、山梨県の白州森と水の里センターは、生産再開のために多額の費用が必要となりました。これを受け実施した「天候異常による被害産地への緊急支援カンパ」に組合員から3,159万8,400円が寄せられました。ジョイファーム小田原の長谷川代表は「『これが産直の底力か』と感じました。金額以上にパワーをもらった」。そして「収穫は少ないながらも、なんとか商品を届けたい」と加工用分も組合員の注文に回してくれました。

〈2014年 記録的な大雪〉

産直産地でとくに深刻な被害が発生した伊豆鶏業(静岡県)、やはた会(山梨県)には、役・職員がボランティアで、倒壊した鶏舎やビニールハウスの片づけや鶏の死がいなどの回収に赴きました。伊豆鶏業の佐藤さんは、「グループ一丸での支援を受け、改めて『パルシステムと産直をやっていてよかった』」と感激。ボランティアに参加した職員からも「産地とのつながりが感じられた」と感想が寄せられました。また「雪害支援緊急カンパ」には組合員から約5千万円が集まり、被害の甚大(被害総額1億円以上)だった産地へ、見舞金と激励のメッセージを届けました。

2014年3月8、9日の2日間にわたって、パルシステムグループ6組織より総勢22名が伊豆鶏業に片づけのお手伝いへ

「パルシステムの産直」の真価

紹介した事例以外にも、まだ記憶に浅い大地震に見舞われた熊本地方は、2015年に大型台風、2016年に大雪と観測史上例をみない異常気象に遭遇し、パルシステムは組合員募金から支援をしています(参照:第108回 東日本大震災の教訓を生かす 熊本地震支援)。近年の天候不順は、今後も続くことが予想され、農畜産物の生産現場に大きな不安や危機感をもたらしています。このような状況下でパルシステムの産直は、これからますます真価が問われていくでしょう。パルシステムにかかわる私たちも、その〝らしさ〟を改めて確認することが大切かもしれません。

*本ページの内容は2016年12月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。