うなぎ未来会議2016に参加 100年後もニホンウナギと共生するために
2016年11月8日
パルシステム連合会は10月28日(金)~30日(日)に東京・中央大学にて行なわれた「うなぎ未来会議2016」開催に協力しました。パルシステムでは行政や研究者と連携し、効果検証しながら、組合員参加型の資源回復運動に取り組んでいます。
ニホンウナギの絶滅リスクを評価
パルシステム連合会は2002年から、大隅地区養まん漁業協同組合とともに、親うなぎを放流する事業に取り組んできました。2013年には両者で大隅うなぎ資源回復協議会を設立し、資源対策について、検証しながら多角的に取り組んでいます。その一環として、放流効果を検証するために「放流モニタリング事業」を2015年に立ち上げ、鹿児島県・肝付町の河川で放流実験と定点観測を続けています。
日本自然保護協会、中央大学、北里大学、ロンドン動物学会が共催した「うなぎ未来会議2016」は、専門家(研究者)全11名によるニホンウナギの絶滅リスクに関する評価会議が行なわれ、そのようすを立候補による市民パネル9名が傍聴し、意見と提言をまとめました。市民パネルの最年少は小学6年生、高校生や会社員、環境団体の非常勤職員など、多様な参加がありました。大隅うなぎ資源回復協議会が後援、パルシステム連合会が開催に協力しています。
ニホンウナギは2014年にIUCN(国際自然保護連合)の絶滅危惧ⅠB類に指定されたことを受け、資源保護に関する意識が高まっています。30日午後に開催されたシンポジウムは一般にも開放され、2日間にわたる討議内容を公表し議論しました。
市民パネルが研究成果に意見
冒頭、IUCNウナギ専門家グループの座長のマシュー・ゴロックさんがスピーチを行い「ニホンウナギの生息地域は複数にまたがり、その生態はミステリアスで興味深い存在です。私たちは2018年にIUCNが行なうレッドリスト再評価のためのデータや知見を積み重ねています。2014年に日本、中国、韓国、台湾でうなぎ資源保護の共同声明を出したのは大きな前進です」と取り組みを評価しました。レッドリストにはさまざまなカテゴリーや基準があり、個体数が一定のレベルにあっても縮小原因がなくなっていない、社会の理解が進んでいない場合も指定を受けます。ニホンウナギは「近い将来における野生での絶滅の危険性がⅠA類ほどではない高いもの」に属しています。
評価会議に参加した研究者からはニホンウナギの動態や危機、対策の現状などについて報告がありました。減少要因については、生息域の喪失と劣化、海洋環境の変化、捕食、過剰な消費、違法な漁獲と流通などが指摘されました。
市民パネルは、データ収集や研究をさらに進める必要性を指摘しました。今後については「発電用ダムの建設が生物多様性に与えている影響は大きい。ダム撤去による事例報告もあるので、そうした観点からの研究も必要ではないか」「池入れされている稚魚の7割は出所不明とのことだが、具体的にどう対策を取るのかまで言及して欲しい」「マルチステークホルダー・マップを作成し、あらゆる立場の人を資源回復に巻き込んでいく工夫が必要」などが挙げられました。本会議を主に進めた中央大学准教授・海部健三さんは「市民パネルが研究成果を批判することで、専門家同士の対話を逸出することがわかりました。批判を超える仕事をしなければいけません」と結びました。
組合員のカンパで資源回復活動
パルシステムでは、うなぎの資源回復に向けて2013年から「ニホンウナギの資源回復のためのポイントカンパ」を組合員より募集しています。2015年度は総額213万5,400円が寄せられました。10月27日(木)~28日(金)にはモニタリング調査を組み入れた職員研修を現地開催しました。この調査では、11匹のうなぎが確認され、データを蓄積することに成功しています。石倉かごがうなぎのすみかとして役立つことが確認できたのは大きな成果です。今後も引き続き、効果的な放流や親うなぎの増加につながる取り組みについて、検証を続けていきます。なおこの事業には、大隅地区うなぎ資源回復協議会を通して、これまでにパルシステムの組合員から寄せられたカンパ金などの支援金が充てられています。ご協力ありがとうございました。
パルシステムではこれからも、行政や研究者とともに、資源回復活動に取り組んでいきます。
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