社会課題を現場に学ぶ「第6回地域連携研究会」開催 生きづらさを抱えた若者の「自分らしく働きたい」を支援
2016年10月3日
パルシステムでは、2016年4月に「地域連携研究会」(運動委員会主催)を設置しました。貧困格差が広がるなか、「食料支援」「子どもの貧困対策」などに対して、可能な連携と支援を行うとともに会員生協との情報連携、地域での解決を研究することを目的としています。
第6回となる今回は、埼玉・深谷市、熊谷市で活動するワーカーズコープの3事業所―深谷とうふ工房、深谷若者サポートステーション(深谷市)、ジョブセンター熊谷(熊谷市)と、桶川駅近くにあるHIBIKIカフェを訪問し、若者の就労や学習支援、居場所づくりなどの活動や施設を視察しました。パルシステムグループの役・職員や関係者など22名が参加しました。
誰もが働ける職場に~深谷とうふ工房
この工房は、物流に携わっていた人たちが業務の打ち切りにより、自分たちで新しい仕事を作ろうと模索し始めた事業です。現在働くメンバーには深谷若者サポートステーションの紹介者や、障がい者の方もいます。所長の中西千恵子さんは、「誰でも働ける現場を作りたい。指示命令になじめない、ひとりでゆっくりやりたい、短時間でないとむずかしいというような方も、障がい者も。その人たちなりの働き方は見つけられると思っています」と話します。その言葉には、数々の成長を目にしてきた事例の裏づけがあります。今後は将来を見据え、日給だった給料を月給制にしたり、就労の受け入れを広げていくために移転する予定で、費用の半分は地域の方からの協賛金や出資だそうです。移転後は働く場作りだけでなく、豆腐のデザートやお弁当など、商品を増やし、そこで食べられるカフェにして、みんなが集まる憩いの場作りも構想しています。
地域の協力が財産~深谷若者サポートステーション・ジョブセンター熊谷
深谷若者サポートステーションは、就労に不安や悩みを持つ若者をサポート・支援するワーカーズコープの運営団体で、厚労省の若者自立就労支援事業の委託を受けて活動しています。対象者は15~39歳までの仕事をしていない人で、相談後はその人にあわせた計画を立てて支援しています。昨年の新規登録者は159名で、就労決定は93名。本人がホームページを見ての問合わせが一番多く、エリアを限定していないため、隣の群馬県からも依頼があるそうです。
ここ10年まったく仕事をしていない人、コミュニケーションが苦手な人も多く、個別の相談だけでは実態に沿わないため、就労プログラムや就労体験を取り入れています。活動をしながら自己肯定感を上げていくのだそうです。就労に近づいた人には、志望動機をいっしょに考えたり、面接の練習、履歴書の書き方指導も行ないます。
参加者から就労後のサポートについて質問があり、スタッフから「アルバイトなら定着や正規などステップアップ支援。また土曜日はここをあけて、OB会や情報交換などの場として提供しています。ほんとうの終わりはその人が決めると思っています。だから来たいと思えば、いつまでも受け入れます」という答えが。また、生協としてできることは何かという質問には、「もちろん就労体験先として受け入れいただき、そのあとアルバイトでもいいので、就労につなげていけるとありがたい」と期待の目を向けました。
一方、発達障害の方については発達障害者就労支援センター「ジョブセンター熊谷」で就労支援をしています。こちらもホームページを見て自分で連絡してくる20~30代の人が多いそうです。相談後はワークサンプルを使って能力や得意不得意を評価。社会福祉士、臨床心理士など専門家がアセスメントを行ない、その後の支援の方向性を決めることもあるそうです。就労訓練では、”疑似オフィス”での実務を体験します。訪問時はトイレ掃除の体験中で、やり方をスタッフが説明し、みなさんは熱心にメモを取っていました。メモをもとに自分マニュアルを作り、それをもとに仕事を遂行するのだそうです。ジョブセンター熊谷の担当者は、「自主性や主体性を育てる環境づくりに注力しています。仕事を通して自己の成長を目指してもらいたい」と話しました。
学び場、みんなの居場所づくり~HIBIKIカフェ
最後に訪問した「HIBIKIカフェ」は、一般社団法人ムーンライトプロジェクトが太鼓集団「響」とともに展開しており、2年前にオープンしました。プロジェクトの代表理事である平野和弘さんは、元浦和商業高校定時制の教諭で太鼓部の顧問です。廃校となっても太鼓部の仲間は「響」を結成して練習を続け、その後本気でやりたいと3年前にプロ宣言しました。平野さんは早期退職し、生きづらさを抱える若者たちの活動を応援しています。
カフェでは、学習支援の場「宿題カフェ」を展開。主に土曜日の14~16時、ボランティアで先生もお願いし、だれでも勉強できるスペースにしています。また土曜日が混雑するため、平日も夕方6時まで行なっています。余裕のある人が次に来る誰かのためにコーヒー代を余計に払う「保留珈琲」や、ここに来る子どもたちとハロウィンや流しそうめんなどのイベントを計画したりもしています。
店長で同校卒業生の飯島さんは、「中学まで不登校で、卒業後は飲食店でアルバイトをしながら、自分で何かしたいと思っていたとき、平野さんに声をかけてもらいました。響の後援会員の珈琲豆屋で本格的に修行し、自信を持って焙煎したコーヒーでお金をかせげるのは、自分を生かせていると実感しています」と語りました。
「『親とけんかした』とか、『学校行きたくない』『ごはん作ってくれない』とぶうぶう言いながら来る子もいる」(飯島さん)そうです。生きづらさを抱えた子どもたちに、学びやふれあい、食事、安心や落ち着きなどを提供できる場所と人がここにはありました。
社会課題を現場に学ぶ「第5回地域連携研究会」開催 継続をテーマに「ともに生きる」拠点をつくる