政府のBSE特措法規則改正案へパブリックコメントを提出 実質的な検査の廃止に反対します
2013年5月21日
パルシステム連合会は5月20日(月)、政府の牛海綿状脳症(BSE)対策特別措置法に基づく施行規則改正省令案に対する国民からの意見募集(パブリックコメント)へ意見を提出しました。管理措置の緩和に反対し、BSE研究の推進とリスクコミュニケーションの改善を求めます。
厚生労働省は4月25日(木)、「厚生労働省関係牛海綿状脳症対策特別措置法施行規則の一部を改正する省令(案)」を公開し、5月24日(金)まで国民からの意見募集(パブリックコメント)を行っています。
省令案は、これまで全頭で実施し4月に21カ月齢以上から30カ月齢超へ引き上げたBSE検査の対象を、さらに48カ月齢超まで引き上げることなどが盛り込まれています。検査対象を48カ月齢まで引き上げることは、実質的な検査の全面廃止につながりかねません。
これを受けパルシステム連合会では5月20日(月)、「BSE特措法施行規則の改正案に関する意見」を提出しました。今回の規制緩和に反対し、輸入品についても国内と格差ない管理措置の実行を求めます。また、BSEに関する知見が十分蓄積されていないことから、研究のさらなる推進と適切な情報の発信、リスクコミュニケーションの強化などについても意見します。
【要旨】
- BSEのさらなる研究を進めてください
- 管理措置の緩和は時期尚早であり、反対です
- 管理措置の異なる外国に緩和を拡大しないでください
- リスクコミュニケーションを本来の趣旨に沿って見直してください
パブリックコメント全文は以下の通りです。
2013年5月20日
BSE特措法施行規則の改正案に関する意見
パルシステム生活協同組合連合会
代表理事 理事長 山本 伸司
BSEの国内発生確認後、速やかに取られた対策によって、牛肉の一定の安全が確保されたことは消費者の安心につながり、国産牛への信頼を高めました。11年以上の間の関係機関の努力には敬意を表します。しかし、この間の管理措置の大幅緩和は、国内措置についても時期尚早であり、まして対策が不十分な外国からの輸入条件も緩和されることに、かつての米国産牛肉輸入再開と同じく、TPP加入をにらんだ輸入拡大のための緩和と疑われ、行政への信頼は揺らいでいます。
消費者のBSEへの不安が去っていない現時点での管理措置の大幅緩和は、国産牛への信頼を損ねて消費を減退させ、飼料高騰と輸入牛肉の増加にあえぐ国内畜産業にとって大きな打撃となりかねません。畜産業を振興する農林水産省と協議し、本当にこうした管理措置緩和が必要か、改めて再検討することを要望します。
BSEは最初の発見から四半世紀経ちますが、潜伏期の長さなどから研究が遅れ、いまだに科学的な知見が不足しています。特に非定型BSEの確認は今までのBSE対策の基とされていた定型BSEと異なることから、BSE対策の見直しを求められる重要な問題であるにも関わらず、研究が進んでいません。科学的な知見が不足していることを踏まえて、消費者が安心できるよう、安全側に立った対策を追求することを要望します。
- BSEのさらなる研究を進めて下さい
BSEは科学的な知見が少なく、正確なリスク評価が行なうことができる状況とはいえません。特に非定型BSEに関しては、わからないことが多い中で、霊長類への感染性が強いことなどが懸念されます。農林水産省など関係省庁と連携して、BSEの研究をもっと積極的に進めることを要望します。貴省の関係する範疇として、非定型BSEのヒトへの感染性に関する実験的及び疫学的研究、クロイツフェルト・ヤコブ病の病原研究、クロイツフェルト・ヤコブ病に類似した疾病の診断に関する再評価、非定型BSEの診断方法、などの研究を要望します。
- 管理措置の緩和は時期尚早であり、反対です
国内ではBSEの発生状況からBSEが駆除されたことはある程度推定されると考えますが、非定型BSEは現行検査で検出されない可能性もあり、BSEについて知見が不足していることから、管理措置の緩和は時期尚早であると考えます。BSE特措法施行規則の改正に反対します。 - 管理措置の異なる外国に緩和を拡大しないで下さい
これまで「内外無差別」の名目で、BSE管理措置が国内と輸入とが連動して緩和されてきたことは行政不信の原因となっています。米国は飼料規制が杜撰なままであり、サーベイランス検査も不適切で、同国には非定型BSEの潜在的流行を疑わせる幾つかの情報(野生鹿での海綿状脳症の流行、過去のミンク脳症の存在、クロイツフェルト・ヤコブ病の集団発生等)があることから、リスクが高いと考えられます。これを無視して2月に輸入規制の緩和が行なわれたことは大変遺憾です。輸入規制のさらなる緩和について食品安全委員会で評価中と聞いておりますが、決して緩和などしないよう要望します。規制を2月以前に戻し、米国に対して飼料規制とサーベイランスの抜本的改善を要請するよう要望します。 - リスクコミュニケーションを本来の趣旨に沿って見直して下さい
今回、食品安全委員会の評価案に関するパブリックコメントが終了しないうちに、貴省がリスク管理に関するパブリックコメントを募集したことは、リスクコミュニケーションの形骸化です。制度をないがしろにしてまで、なぜ緩和を急ぐのか疑問です。そもそも1ヶ月で意見を求めること自体が消費者や消費者団体には負担で、本当に意見を求めるのであれば2~3ヶ月は必要です。短期間の意見募集は規制を設ける際などの国民の健康をできるだけ早く確保するために必要な場合等に限るべきです。国民に意見を求める本来の趣旨に基づき、関係省庁と協議してリスクコミュニケーションを改善することを要望します。
以上
※パブリックコメントは、国の行政機関などが新たな政策や規則などを定める際に、国民から広く意見を募集する手続きのことです。