政府のBSE対策変更案へパブリックコメントを提出 輸入規制緩和に反対し再評価を求めます
2012年12月17日
パルシステム連合会は12月17日(月)、政府の牛海綿状脳症(BSE)管理措置変更案に対する国民からの意見募集(パブリックコメント)へ意見を提出しました。輸入規制の緩和に反対し、人間への感染性が強いとされる非定型BSEを考慮した管理措置などを求めます。
政府の「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会」は11月20日(火)、「牛海綿状脳症(BSE)発生国からの牛肉等の輸入に関する措置の見直し(案)」「と畜場法施行規則及び厚生労働省関係牛海綿状脳症対策特別措置法施行規則の一部を改正する省令(案)」「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(案)」を公開し、国民からの意見募集(パブリックコメント)を行っています。
これを受けパルシステム連合会では12月17日(月)、「BSEの管理措置変更案に関する意見書」を提出しました。BSEをめぐる輸入規制の緩和に反対するとともに、近年判明し人間への感染性が強いとされる非定型BSEへの対策を考慮した新たな管理措置を設けるよう、意見を提出しました。要旨は以下の通りです。
【要旨】
- 国内BSE管理措置も輸入条件も緩和しないこと
- 非定型BSEのリスクを考慮した管理措置を取ること
- 米国産牛肉の輸入を即時停止し、再評価を諮問すること
パブリックコメント全文は以下の通りです。
2012年12月17日
BSEの管理措置変更案に関する意見書
パルシステム生活協同組合連合会
代表理事理事長 山本伸司
BSEについては、飼料規制・全頭検査・SRM除去の3つの対策が補いあって安全性が担保されていると私たちは考えています。米国産牛肉の輸入再開のために対策が歪められ、法的には検査が20ヶ月齢超とされてからも、消費者の不安の声に応えて全頭検査が続けられてきました。BSEはまだ不明の点も多い病気で、非定型BSEの感染性についての知見がわかってきたのも近年のことです。
そのような状況の中で、規制が緩和されることは不適切な判断といわざるを得ず、逆に現在の規制で十分なのかを改めて検証することこそ必要です。食品安全委員会の評価書(以下、評価書)にも書かれている非定型BSEのリスクなど、科学的な知見の不足を十分に認識して、管理措置の緩和をするのではなく、BSE対策の強化と研究の推進を図ることを要請します。
記
(1) 国内BSE管理措置も輸入条件も緩和しないこと
非定型BSEの感染性がようやく近年になって明らかにされるなど、BSEの知見は非常に不足しています。知見・情報が十分でない中では、国内対策についても、輸入条件についても、BSE規制緩和をしないよう、要請します。
BSE管理措置緩和と輸入緩和は、消費者に牛肉への不安を高めます。消費者の不安が科学に基づかず情緒的であるとよく言われますが、十分にわかっていないことを「危険という証拠がないから安全」と判定されても不安は消えません。不安なまま食べさせられることは、決して安全な食事とは言えません。貴省が予防原則を採用して、リスクの可能性のあるものには、消費者の安全・安心を最優先に対応することを要請します。
(2) 非定型BSEのリスクを考慮した管理措置を取ること
評価書には非定型BSEについて、霊長類に対して強い感染性があること、かつ筋肉に感染性が認められたことが書かれています。これは大変憂慮される新事実です。今までのBSE対策は全て定型BSEに合わせて決められています。非定型BSEに関する知見をさらに集め、下記の点を含めて早急な検討を行なうよう、食品安全委員会に諮問することを要請します。
- BSE検査について、検査部位が延髄閂(かんぬき)部だけでよいか否か、等の再検討。
- SRMについて、感染後の体内動態を調べて再検討。
- 非定型BSEの体内動態等の研究。
- 人への感染有無について、より詳細な疫学調査。(非定型BSEの感染形はvCJDではないため)
(3) 米国産牛肉の輸入を即時停止し、再評価を諮問すること
米国では飼料規制が未だに不十分であり、下記のようにBSEリスクについて懸念材料がいくつもあります。そうした点を含めて米国のBSEリスクを再評価するよう食品安全委員会に再諮問するべきです。輸入牛肉に関する今までの評価は、すべて先方の政府の報告のみに基づいて行なわれ、実態が十分に明らかにされませんでした。特に米国には様々な疑念があるにも関わらず、不問に付されていることが消費者の立場から見ると全く遺憾です。米国産牛肉の輸入を今すぐ停止し、十分な対策が米国で取られるまで輸入を再開しないでください。
- 米国では依然として牛由来原料が他の家畜に給餌され、豚・鶏由来原料が牛に給餌できるという、極めて不完全な飼料規制が取られており、BSEが増幅する可能性があること。
- 症状牛のみを検査対象とする米国のBSEサーベイランスは非定型BSEが検査されるか疑問な上、検査牛の選定に恣意性が入る余地があり、また定型BSE用の検査で非定型BSEを十分に検知できるか不明であるので、十分なサーベイランスとは考えられないこと。
- 筋肉にも感染性のあるとされている非定型BSEについてはSRM除去では安全が担保されないこと。
- 米国の牛肉生産工程は1頭あたり処理時間が極めて短く、背割り工程でのSRM汚染が懸念されること。
- 米国では鹿類のプリオン病(CWD)が蔓延していて、非定型BSEとの関連が疑われること。
以上
※パブリックコメントは、国の行政機関などが新たな政策や規則などを定める際に、国民から広く意見を募集する手続きのことです。