「エネルギー環境に関する選択肢」へパブリックコメントを提出 原発を速やかにゼロにし国民的議論を求めました

2012年8月1日

パルシステム連合会は8月1日(水)、政府の「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する国民からの意見募集(パブリックコメント)へ意見を提出しました。原子力発電を速やかにゼロにすることや、再生可能エネルギーの普及、国民的議論を深めることなどを求めています。

政府の「エネルギー・環境会議」は6月29日(金)、「エネルギー・環境に関する選択肢」を公開し、国民からの意見募集(パブリックコメント)を行っています。パブリックコメントは、国の行政機関などが新たな政策や規則などを定める際に、国民から広く意見を募集する手続きのことです。

これを受けパルシステム連合会では8月1日(水)、原子力発電をゼロにすることや再生可能エネルギーの普及、国民的議論の深化などを求める意見を提出しました。要旨は以下の通りです。

【要旨】

  1. 原子力発電を速やかにゼロにすべき。
  2. 破綻した核燃料サイクル政策は即刻中止すべき。
  3. エネルギー消費を減らし、再生可能エネルギーを普及させるべき。
  4. 真の国民的議論にすべき。

政府による「エネルギー・環境に関する選択肢」に対するパブリックコメント募集は、8月12日(日)まで受け付けています。パルシステムでは、パブリックコメント募集を「意見や思いを政府に伝える大切な機会」ととらえ、1人ひとりそれぞれの立場による意見表明を、ホームページなどを通じて呼びかけています。

今後の原発のあり方について政府が国民の意見を求めています 原発に対する意見を政府に届けましょう!

パルシステム連合会のパブリックコメント全文は以下の通りです。

「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する意見(パブリックコメント)

パルシステム生活協同組合連合会

 

私たちパルシステム生活協同組合連合会は関東を中心に福島県から静岡県までの1都9県で活動している組合員130万人の生協のグループです。
東京電力福島第一原子力発電所の事故はなんら収束しておらず、原発周辺地域の住民は故郷に帰る目処もなく仮設住宅で暮らしています。また報道では国民の過半数が原子力発電からの撤退に賛成しています。そのような状況であるにも関わらず、民意に耳を傾けることなく停止中の大飯原子力発電所を再稼働させた政府に対して多くの国民が憤りを感じています。以下、原子力発電に反対の立場から「エネルギー・環境に関する選択肢」についての意見を提出します。

  1. 3つのシナリオについて
    1. 「原子力発電の速やかなゼロ」を選択すべきです。
      • 福島第一原発事故の被害の規模と深刻さ、東日本大震災により発生の可能性が高まっているといわれている大地震のリスク、原発から出される放射性廃棄物の超長期にわたる管理の問題など、原子力発電はあまりにも大きな問題を抱えています。しかし提示された3つの選択肢は、どれも「過酷な事故は起きない」という前提に立って書かれています。
      • 私たちは、原子力発電所の再稼働は行わず、原子力発電を速やかにゼロにすることを強く要望します。「ゼロシナリオ」の実現に、2030年を待つ必要はありません。速やかな脱原発を選択すべきです。
    2. 「15シナリオ」「20-25シナリオ」は原発の増設や運転期間延長が必要な選択肢であり、「原発依存度を低減する」という基本理念とは相反する選択肢です。
      • 本文に記載してある通り、「原発依存度を低減する」という基本理念のもと、「中長期的には原発依存度を可能な限り減らす」という方針が確認されています。
      • 「40年廃炉」が守られるのであれば、現在50基ある原発は2030年時点で20基になります。20基の稼働率を80%(異常に高い稼働率です)とすると、原発比率は約15%弱になるとの試算があります。
    3. あるべき社会像を「国民的に論議」に付し、政策立案と制度改革に取り組むべきです。いう基本理念とは相反する選択肢です。
      • そもそも、基本理念や方針が確認されている中で、2030年度時点での「定量的な選択肢」のみで国民に問いかけることにどのような意味があるのでしょうか。原発の電力に依存しない社会像を描き、論議を行った上で、それに向けた政策立案、制度改革に一刻も早く取り組むべきと考えます。
    4. 再生可能エネルギーを普及させるべきです。
      • 再生可能エネルギーは世界的に急成長をしています。世界的に見ると、2011年単年で、太陽光発電は3,000万kW、風力発電は4,100万kWも発電量が増えています。合わせると原発71基分がたった一年で増えています。再生可能エネルギーの活用に向けて調査や研究、投資を行うべきです。
  2. 核燃料サイクル政策のあり方を選択肢に紛れ込ませるのは不適切です。
    • 原発比率の問題と核燃料サイクルの問題とは同義ではありません。3つの選択肢のなかに核燃料サイクル政策のあり方までが含まれているのは非常に不適切です。原発比率とは別の重要課題として国民に提示し、議論すべきです。
    • 私たちは、再処理と高速増殖炉による核燃料サイクルは破綻しており、即刻中止すべきだと考えています。
  3. 上記2点を踏まえ、私たちは、原子力発電とエネルギー政策に関し、以下の政策変更および制度改革を強く要望します。
    1. 速やかに脱原発を実現する。
      1. 国策による原発・核燃料サイクルの開発・推進体制をやめる。
      2. 被災者救済、汚染の除去、地域の復興を進め、健康と生態系への影響を最小化する。
      3. 福島第一原発事故の徹底検証に基づく安全点検・安全確保を行う。
      4. 隠されてきたデータをすべて情報開示し、エネルギー政策について開かれた国民的論議を行う。
      5. 国際的な放射性物質汚染を謝罪し、徹底した情報開示を行い、汚染原因国としての責任を果たす。
      6. 原発の新設と増設は中止し、原発推進・依存政策から速やかに総撤退する。
      7. 定期検査中の原発は、再稼働は行わない。
      8. 核燃料サイクル施設はすべて撤退する。
      9. 原発・核燃料サイクル施設で働く労働者の被曝管理・放射線防護管理を改善、強化する。
    2. 節電と省エネ、効率化と最適化によってエネルギー消費をいっそう減らす
      1. エネルギー基本計画の需要見通しを見直し、目標を定めて、政策的にエネルギー消費の削減を進める。
      2. エネルギー消費の「見える化」を行い、スマートメーターやホームエネルギーマネジメントシステム、ビルエネルギーマネジメントシステムの導入を推進する。
      3. エネルギーのロスと使い過ぎにメスを入れ、効率化を推進し、過剰消費は見直す。
      4. 産業用・業務用・家庭用の電力・エネルギーを、節電と省エネを促す料金体系に見直す。
      5. ピークを抑制する季節別・時間帯別メニューのきめ細かい料金制度を導入する。
      6. 住宅・施設の断熱・遮熱性能を高め、熱エネルギーの消費を減らし、熱源には電気よりもガスや太陽熱・バイオマスの利用を重視し、過度の電力依存から脱却する。
    3. 原発への依存に替えて、再生可能エネルギーを急速に普及させる。
      1. エネルギー政策基本法とエネルギー基本計画の大転換と、電力制度の大改革を進める。
      2. 固定価格買取り制度を継続的に改善しながら、再生可能エネルギー発電の優先接続・優先給電と送電線の系統強化を進める。
      3. 多様なエネルギー事業・発電事業を推進するために、地域主体の共同出資による再生可能エネルギー事業を支援する。
      4. 市民への情報公開と、政策決定プロセスへの主体的参画を進めて、生活者のエネルギーと電力の選択の権利を確立する。
      5. 原発推進と高コスト体質を支えてきた総括原価方式は廃止も含めて徹底的に見直す。
      6. 電力会社の地域独占体制を見直し、発・送・配電は分離し、公共のインフラとして地域連携の広域送電網を強化する。
      7. 火力発電は効率的な最新鋭石炭火力、LNG火力への転換を促し、地球温暖化防止と両立させる。
      8. 車両や動力については、立地や用途に応じて適切なエネルギー源・燃料源を選択し、省エネを進める。
  4. 国民的議論のあり方について
    • 今回の「国民的議論」のあり方には多くの国民が非常に疑義を抱いています。パブリックコメント募集の3つの選択肢の設定の仕方、それぞれの表現などは、作為的、誘導的といわざるを得ません。また意見公聴会の開催については、告知から締切りまでの時間の短さ、運営方法など、大いに疑問があります。電力会社の社員が会社の意見を発言するなど、もってのほかです。

 

以上

パルシステムグループでは、会員生協からもパブリックコメントを提出しています。

原発はNO!「エネルギ-・環境に関する選択肢」へのパブリックコメントを提出しました。(パルシステム千葉)

パルシステム埼玉は、「エネルギー環境に関する選択肢」に対する意見(パブリックコメント)を政府に提出しました(パルシステム埼玉)