「食品中の放射性物質に係る基準値案」へパブリックコメント 継続的な引き下げ検討など6項目を求めます

2012年1月31日

パルシステム連合会は1月31日(火)、厚生労働省がまとめた「食品中の放射性物質に係る基準値案」に対し、パブリックコメントを提出しました。さらに低い規制値の検討や検査体制の拡充と情報公開など6項目について要望しました。

厚生労働省の薬事・食品衛生審議会は2011年12月22日(木)、「食品中の放射性物質に係る基準値」案を示し、パブリックコメントを募集しています。審議結果に対してパルシステム連合会は1月31日(火)、下記の意見を提出しました。さらに低い基準値の設定をめざすこと、検査体制の拡充と情報公開など、6項目を求めています。全文は下記の通りです。

食品中の放射性物質に係る基準値の設定に関する意見(パブリックコメント)

東京電力福島第一原発事故による放射能汚染は、多くの国民に食の不安をもたらしています。この困難にあたって、官民共の最大限の努力が求められます。弊会は昨年7月原子力災害対策本部長宛て要請書で速やかな暫定規制値見直しを求めましたが、弊会として自主基準(ガイドライン)を設け、現在さらにその引き下げを検討しています。貴省が暫定規制値の見直しを検討されていること自体は歓迎されることですが、暫定規制値の見直しは遅きに失し、また汚染の現状を考慮すれば基準値はもっと低くすることができると考えます。

発癌など放射線の晩発影響については閾値がないとされています。ICRP(国際放射線防護委員会)が掲げる放射線防護三原則の「最適化原則」においても、放射線被曝は可能な限り低く抑えなければならないとされています。弊会は放射線被曝をできるだけ低くすべきであるという考えに基づき、今回の基準値設定案と薬事・食品衛生審議会放射性物質対策部会報告書(以下「報告書」)について、以下の意見を提出します。

(1)速やかな対応をとること(経過措置期間を設定しないこと)

暫定規制値の見直しは歓迎しますが、暫定規制値の引き下げはもっと早期になされるべきであったと考えます。実際には多くの食品で放射能が減少した時期にも暫定規制値が高く設定し続けられたことで、消費者は不安を与えられ、生産者も悪影響をこうむったと考えられます。放射能対策が遅れたことについて、審議会で調査検討して、教訓化し、今後食の安全に関わる措置が遅れないよう強く要望します。

「市場に混乱が起きないよう」に経過措置期間を設定するとしていますが、それは全く逆です。経過措置期間中、新基準に適合しない食品が流通し続ける印象を消費者に与えると考えられます。新基準を超過する食品は事故の原因者たる東京電力ないし政府が買い上げるべきと考えます。経過措置期間は設けないか、設けるとしても必要最低限とし、できるだけ早く施行することを要望します。

(2)可能な限り低い基準を設定すること

報告書は2.1節において「合理的に達成できる限り線量を低く保つ」とALARA原則の採用をうたっていますが、その考え方を基準設定に貫くことを要望します。乳幼児及び小児、妊婦への影響を考慮し、水だけでなく、米、牛乳、乳幼児用食品についても、できるだけ低い基準を設定すべきと考えます。米は一般食品でなく、牛乳と同じように分けるべきと考えます。一般食品を含め、ALARA原則に従って基準値の再検討を要望します。

(3)恒久的な基準とせず、さらに引き下げを行なうこと

報告書2.2節で暫定規制値に代わる長期的な状況に対応するものであると書かれていますが、福島第一原発の状況は収束というにはほど遠いものです。状況が改善されれば基準をさらに引き下げるべきと考えます。ウクライナでも段階的に基準が引き下げられたと聞いています。基準値は今後も継続的に引き下げることを要望します。

(4)検査体制を拡充すること

基準が設定されても十分な検査が行なわれなければ、消費者は流通食品に対して信頼を置くことができません。基準を超過した食品が流通するのを未然に防ぐため、流通前に十分な検査を行なうこと、行政の検査体制を大幅に強化すること、民間の検査を促進することを要望します。

行政やさまざまな事業者から結果を発表していますが、それらの情報で消費者が混乱することもあるので、検査方法や検査結果の見方について情報の提供、また公表方法や表示についての標準化や制度等の検討を要望します。

ストロンチウムやプルトニウムなどについても、消費者の間に不安の声があります。これらの核種は測定が難しいこともあり、モニタリングデータが非常に少ないのが現状です。貴省が調査研究的に調査することが報道されていますが、陸上及び水産物の両方について、できるだけ多く行政のモニタリングを実施し、遅滞なく公表されること、影響評価を行なって基準に反映することを要望します。

(5)生産者・食品事業者への指導、食事による被曝・影響の低減指導をすること

放射線の晩発影響(発癌)には閾値がないとされており、特に妊婦や乳幼児を持つ母親など消費者は、検出限界を下回る放射能であっても、できるだけ摂り入れないように注意を使っています。多くの消費者は基準値以下ということで安心するものではありません。

農林水産省などから生産者・食品事業者に、基準以下でもできるだけ放射能を少なくするよう指導すると共に、消費者と生産者・食品事業者が相互理解する場の設定を要望します。

放射能・放射線は、調理・食事のし方や食生活、その他の生活習慣で、摂取や影響を減らすことができるとされています。消費者に対して、その知識・情報の提供に取り組まれることを要望します。

(6)外部被曝について早急な対策を取ること

空間放射線が高い地域では、内部被曝とともに外部被曝が大きな問題となると考えられます。平常時の年1ミリシーベルトという線量限度は本来内部被曝と外部被曝の合計で超えてはならないものです。環境省などが担当されていることは承知していますが、国民の健康を司る貴省からも早急な外部被曝対策について、関係省庁に強く要請されることを要望します。