「原発廃炉」「原発事故損害賠償」で政府へ意見 みえにくい国民負担の制度化を懸念します
2016年10月28日
政府が検討している原発廃炉費用問題と原発事故損害賠償費用をめぐる電気料金へ転嫁する制度について、パルシステム連合会は2016年10月28日(金)、政府へ意見を提出しました。国民に見えにくい形で負担させる制度化を懸念します。
提出した意見は「原子力発電の廃炉費用に関する意見」「原子力損害の賠償に関する意見」です。政府では現在、原子力発電に関連して2つの国民負担が検討されています。1つは原発の廃炉費用を託送料金に上乗せし、原発を持たない新電力からも徴収し、すべての消費者から電気料金として負担させようとする案、もう1つは原発事故の損害賠償に上限を設け、不足分を税又は電気料金として国民に負担させようとする案です。こうした原子力発電の後始末のための費用が、国民に見えにくい形で制度化され、回収されていくことには問題があります。パルシステムでは、消費者の負担に関わる重大な問題として捉え、両意見を政府へ提出しました。
1.原子力発電の廃炉費用に関する意見
経済産業省総合資源エネルギー調査会の「電力システム改革貫徹のための政策小委員会財務会計WG(ワーキンググループ)」は、廃炉費用を着実に回収していくための制度変更を検討しています。そのなかで、原子力発電所の廃炉費用について「電力自由化に伴い、旧一般電気事業者の販売電力量が想定を下回ることや原価での販売が維持できなくなることにより、規制料金の下で保証されてきた原価回収が見込めなくなる」として、総括原価方式の残る託送料金に廃炉費用を計上し、原発を持たない新電力も含めて、確実に回収できるよう制度変更することが検討されています。小委員会では年内にも一定のとりまとめを行うこととして進められています。
2.原子力損害の賠償に関する意見
内閣府原子力委員会の原子力損害賠償制度専門部会では、原子力損害賠償法を見直し、原発事故を起こした電力会社などの賠償責任に上限を設け、超えた分は税金や電気料金などの国民負担で補う「有限責任」案が検討されています。これらの費用の転嫁先として想定されているのが、電力自由化後も公共料金として残る託送料金です。託送料金への上乗せは新電力の損益に直結します。政府は、新電力が原子力発電の電気を安く仕入れることができる市場整備も別途検討していますが、再生可能エネルギーを中心に調達する新電力には恩恵はありません。