社会課題を現場に学ぶ「第5回地域連携研究会」開催 継続をテーマに「ともに生きる」拠点をつくる
2016年9月7日
パルシステム連合会は8月31日(水)、東京・立川市の高齢社会の食と職を考えるチャンプルーの会とさんきゅうハウスを訪問し、高齢者や生活困窮者の立場でよりよいくらしを目指す活動を視察しました。
パルシステムでは、2016年4月に「地域連携研究会」(運動委員会主催)を設置しました。貧困格差が広がるなか、「食料支援」「子どもの貧困対策」などに対して、可能な連携と支援を行うとともに会員生協との情報連携、地域での解決を研究することを目的としています。
第5回となる今回は、東京・立川市で活動する高齢社会の食と職を考えるチャンプルーの会、さんきゅうハウスを訪問し、高齢者や生活困窮者などの支援活動や施設を視察しました。パルシステムグループの役職員や関係者など25名が参加しました。
高齢社会の食と職を考えるチャンプルーの会
NPO法人高齢社会の食と職を考えるチャンプルーの会は「住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために、健康と生きがいと人のつながりが手に入る地域の居場所を作りたい」と前理事長の紀平容子さんを中心に、約50名の女性が出資者となって1998年に設立されました。
高齢化が進展する立川市若葉町のけやき台団地にある商店街の空き店舗を活用し、レストランサラ(1999年)、ひろばサラ(2002年)、デイサービスサラ(2003年)を開業、近年ではシニアによる手仕事カフェや居宅介護支援事業などにも取り組んでいます。レストランで作られる弁当は高齢者の食事や嗜好を徹底的に分析し、地元の野菜や保存料無添加にもこだわった充実の内容で、有償ボランティアが依頼宅へ1日約40食を宅配しています。デイサービスの昼食にも同様のものが提供されています。
「“超高齢化”が進んでいますが、ただおびえるだけでなく、個々のつながりを強めていくことで安心して暮らせる環境を、自分たちの手で作っていきたいのです」と理事長の田中幸恵さん(写真)は言います。「NPOの多くは地域の課題を解決していくための組織で、短時間で飛躍的に事業実績を伸ばす類のものではありません。幸い、私たちには複数の事業があることで人のつながりが重層的になっています。健康・いきがい・つながりをキーワードに、すべての事業において個別対応を心がけ、“継続”をテーマに地域づくりをすすめていきます」。
さんきゅうハウス
NPO法人さんきゅうハウスは、ホームレスや生活困窮者の支援にかかわり、入浴サービスと食事の提供、休憩ができる場の確保を目的として活動しています。2000年よりホームレス支援にかかわり、2011年のさんきゅうハウス設立メンバーである理事の大沢ゆたかさん(写真)にヒアリングしました。「銭湯に断られるなど、入浴ができないために就労面接、すなわち自立の一歩を断念するというケースを見てきたことが設立のきっかけとなっています。かつては河川敷に多く見られたホームレスが、近年は駅や街に移動してきています。多くは生活技術に乏しく、心身に障害を持っていたりと社会的に弱い立場の人が多いです」。当研究会でも7月に視察した社会福祉法人グリーンコープの活動を知ったことで、生協との連携による生活困窮者支援について展望するようになったと言います。
雇用を創出し地域に根ざした活動・拠点としてのカフェ運営、カルチャー教室の開催、パルシステムも食材提供するフードバンク事業の推進と、多岐にわたる活動は寄付や助成金、ボランティアによって支えられています。同じく理事の吉村一正さんは「スタッフの多くは生協の組合員の方です。生協とのさらなる連携は今後も働きかけていきます。私たちの活動が地域へどのような波及効果をもたらしたのか、利用・相談人数だけでなく、利用者の変化も含め詳細に報告書にまとめています。事業継続は決して楽ではありませんが、近隣住民の理解を求めながら、地域の拠点づくりをすすめます」と語りました。
佐々木博子運動委員長(パルシステム千葉理事長)は、まとめとして「地域が変われば人も環境も異なります。それぞれの地域に持ち帰って検討するとともに、生協の本来のミッションとは何か、委員会で前向きな議論をしていきたい」と今後の抱負を述べました。