TPPフォーラム「日本の農業と食の安全、協同組合の行方」 食、雇用、医療――幅広い分野に懸念あり

2016年2月26日

パルシステム連合会は2月22日(月)、衆議院第一議員会館で開催されたTPPフォーラム「日本の農業と食の安全、協同組合の行方」に後援しました。海外からTPP交渉に詳しい2名の専門家を招き、TPPの影響と問題点を考えました。

ほほ満席となった会場

海外の専門家2氏が最新情報を紹介

農と食をつなぐ産直に長年取り組んできたパルシステムグループでは、TPPは食の安全性確保や国内農林水産業など、くらしや地域社会全体が崩壊する可能性が高いと考え、参加に反対しています。

TPPフォーラムには、生協や農協などの協同組合関係者や政治家、弁護士、一般参加者など300名が参加し、格差問題と政治情勢に詳しい海外の専門家2氏から、TPPの与える影響と抱える問題点について講演およびパネルディスカッションを行いました。

リードスミスさん

疫病対策や原料表示など食の安全に影響

基調講演は「TPPが各国に与える影響」として、TPP交渉の過程を6年間にわたってウォッチしてきたサニア・リードスミスさんが、日本の農業、食の安全、協同組合事業への影響について解説しました。

TPPが日本の食分野に与える影響についてリードスミスさんは「関税引き下げによる食料自給率低下だけにとどまりません」と警告します。安価な輸入品と競争になるだけでなく、食料の生産維持を目的とした補助金制度も見直しを迫られる可能性があります。食の安全性についても、国内では行われていない、化学薬品や放射線照射で衛生管理された食品の輸入を認めなければならなくなる可能性が高いといいます。

ほかにも、疫病の発生などで輸入を制限する緊急措置もとりにくくなったり、企業の申し立てにより遺伝子組み換え作物の規制や原材料表示などの制度が見直されたりするなど、同様の協定が結ばれた他国の事例を示し、その影響について紹介しました。

協同組合に与える影響については「すべての分野で公平な条件での競争が義務付けられます。そのひとつとして、おそらく『投資価値を下げる』として共済制度が大きな問題として取り上げられることでしょう。関連企業による議会へのロビー活動しだいでは、さらに追加譲歩を協力に求められることになるかもしれません」と分析しました。

カトウさん

雇用の不安定化は日本のほうが影響大

続いて「米国政治の視点からみたTPP」について、米国在住の国際コンサルタントであり米国政治の事情に詳しいトーマス・カトウ氏が報告しました。現時点での米国情勢についてカトウさんは「大統領に通商交渉の権限を与えるTPA法案が議会で成立しましたが、採決はきわめて僅差でした。大統領予備選でも各候補が反対を表明しており、批准は『まずない』と考えていいでしょう」と予測ました。

ただし「世論を受けて賛成派は沈黙しているだけにすぎません。まだ安心しないほうがいいでしょう」と話し、TPPの抱える問題点を食、投資、医療など11項目にわたって挙げました。「製造業を中心に、賃金の低い地域へ産業が流出すれば、雇用が失われます。これにより多くの人々の生活が不安定化し、消費が停滞します。この影響は、米国より日本のほうが大きいと考えています」と指摘しました。

もっとも懸念されているISDS条項については「企業が国を訴え、巨額な賠償金を支払わされています。過去の判例にとらわれないしくみで、経済学者や司法学者からも問題視されています」(カトウさん)、「環境保全を目的とした規制も『投資を妨げる』とした企業の申し立てが、国の司法判断を覆した例もあります。TPPによって三権分立が成立しない事態となる可能性があります」(リードスミスさん)と、ともに危機感を表しました。

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