ウクライナ支援募金の報告会 「インフラ断絶のなか厳しい冬対策が急務」

2022年10月21日

パルシステム連合会は10月17日(月)、オンラインで「『ウクライナ人道危機緊急募金』報告会」を開催しました。今年3月から4月にかけて呼びかけた募金を贈呈した6団体から、募金の具体的な活用とウクライナや周辺国の状況、今後の課題について報告がありました。

平和の実現に考える「私たちができること」

開催にあたり藤田順子平和・地域活動委員長(パルシステム神奈川理事長)は「軍事侵攻は、私たちに大きな衝撃を与え『自分にできること』へ思いをはせました。募金はあらかじめ、兵器に使用されないことと、報告会を実施することを明確にしました。参加団体の活動へ敬意と御礼を表するとともに、報告から平和の実現にできることを考えていきたいと思います」とあいさつしました。

報告では、募金贈呈先の6団体が活動を紹介し、ピースボート災害支援センターは支援拠点のルーマニアから現地の状況を伝えてもらいました。いずれの団体も、支援の長期化は避けられそうにない見通しを示し、ウクライナ国内で電気や水道といったインフラが破壊されたことで、これからの冬を過ごせる環境の整備が喫緊の課題となっていることが報告されました。

報告を受けて大信政一理事長は「募金は、1カ月で14万人を超える組合員から1億6千万円が寄せられました。多くの人から預かった募金が有効に活用されていることが分かりました。会員生協では避難民の支援も始まっています。これからも、市民の立場で平和を実現するための活動を、小さなことから積み上げていきたいと思います」と述べました。

各団体からの報告概要は、次の通りです。

生協と同じく箱詰め 思いも届ける
認定特定非営利活動法人 ADRA Japan 小出一博さん

ADRAは以前から、ウクライナや周辺国に支部があります。各国の拠点から食料品を中心に提供活動を実施し、日本は主にスロバキア・チェコからの輸送を担当しています。
物資は、油、小麦粉、シリアルなど20種類以上を箱詰めし、20tトラックを週1~2回輸送します。食品購入費や輸送費に募金を活用しました。
箱詰めした食品を各家庭に届ける仕組みは、生協と同じです。手間はかかりますが、バランスに配慮したセットをそのまま手渡すことで、思いも伝わるようです。
配布中、スタッフに「日本の人?お礼が言いたい」とお年寄りが声かけてくれました。聞くと、戦争で24歳の孫を亡くしたそうです。それでも「支えてくれてありがたい」と話しました。
現在は、戦況の激しい東部への支援実現へ向けて検討を重ねています。

ドライバー確保難しく輸送手段見直しも
一般社団法人ピースボート災害支援センター(PBV) 鈴木郁乃さん

ルーマニアの支援拠点、クルージュ・ナポカから報告します。現地で活動する複数のNGOと連携し支援活動を続けています。

パルシステムからの募金は、ウクライナ国内への物資支援に活用しています。物資は食品や紙おむつ、洗剤などです。ただしウクライナ国内でトラックのドライバー確保が難しくなっており、輸送手段の見直しを進めているところです。

そのほかの活動としては、がん患者などのサポートを行っています。ウクライナの病院では、負傷者の治療が優先されており、取り残されたがん患者などが治療の継続に困窮しています。そこで国外へ転院し、引き続き治療を受けられるよう取り持っています。

昨日、避難者の女性と話す機会がありました。日本から来たことを伝えると「そんなに遠くから?」と驚かれ、感謝されました。終わりのない不安のなか、逆に支援者を心配してくれる気持ちが温かかったです。

長期化覚悟も「早く帰りたい」
認定特定非営利活動法人難民を助ける会(AAR Japan) 景平義文さん

ウクライナ西南部に隣接するモルドバを拠点に支援しています。モルドバは小国で経済成長率もマイナスと厳しいなか、あたたかく難民を受け入れている印象です。

同国への避難者は、他国へ移動する通過目的が多いですが、6月から滞在者が増えています。8割が女性や子どもたちです。

支援活動は、WFP(国連世界食糧計画)と連携し食品や衛生用品を配付しています。提供先は、RAC(難民受け入れセンター)で、70カ所3千人が居住しています。そのほか、親戚、知人宅に身を寄せる世帯にも提供しています。

侵攻から半年が経過しました。避難者は帰りたい気持ちがありながら、避難生活が当面続くことも覚悟しています。だから「近くにいたい」「すぐ帰れるように」とモルドバにとどまっています。

こうした複雑な心境をサポートするための心のケアや、慢性疾患を抱える人、シングルマザーなどより深刻な人への支援策を探っているところです。

深刻状態続くほかの地域にも関心を
特定非営利活動法人国連UNHCR協会 天沼耕平さん

以前からウクライナ国内に6事務所を開設していましたが、現在は7カ所に増やして活動しています。そのほか3地域に倉庫があり、スタッフ200人が従事しています。

支援活動は、シェルターの設置と緊急支援物資の提供、現金給付プログラムによる給付などを実施しています。

近隣国へ避難するなかには、身分証明書のない人も多くいます。避難者の8割が女性でもあり、犯罪、人身売買のターゲットにもなりやすいのが現状です。聞き取り調査によって必要な支援を判断するだけでなく、さまざまな不安をサポートすることも、大きな役割になっています。

そのためユニセフと連携し「ブルードット」と呼ばれる総合サポートセンターを各地で開設、運営しています。カウンセリングやコミュニティセンターの役割も果たしています。

寄付なしでは活動ができません。ウクライナ以外にも深刻な地域は数多くあり、目を向けてほしいと願っています。長期的な支援へ理解をお願いします。

学校閉鎖もオンラインで教育再開
公益財団法人日本ユニセフ協会 石尾匠さん

ウクライナ国内は、学校が攻撃を受けたり、避難所として転用されたりして、教育の場が機能しなくなりました。そこでオンラインプラットフォームを活用し、授業を再開させています。子どもたちは、家族や友人の死傷、家の破壊など、数々の精神的苦痛にさらされています。心に傷を負った子どもは5百万人以上いると言われます。

ユニセフでは、支援拠点を10カ所に拡大し、支援活動を続けています。各種物資提供のほか、子どもの保護として暴力防止へ向けた心理的ケアサービスを提供します。カウンセリングはオンラインでもできるようになりました。

そのほか人道的現金給付や、ブルードットセンターの運営を担っています。ブルードットセンターには、法律や心療の専門家、通訳が常駐し、さまざまな相談に対応しています。

ウクライナ危機の影響は世界に広がっています。特に「アフリカの角」といわれるエチオピア、ソマリア、ケニアなどで子どもたちが重度の栄養不良危機にさらされています。こうした支援活動にも理解と協力があるとうれしいです。

シェルターで応急手当の臨時講習
日本赤十字社 佐藤展章さん

ウクライナでは、武力紛争などでの保護救援を目的とする赤十字国際委員会(ICRC)を中心に活動しています。避難者は、東部から押し出されるように西部、国外へ移動しています。赤十字は軍隊からの攻撃を受けないため、避難車列の先導もひとつの役割となっています。

戦闘地域は、重い病気やケガなど最も弱い人が取り残されます。そしてそこへは援助が届きにくいのです。これまで10万人以上のボランティアが参加し、救助や支援活動を展開しています。もちろん親ロシア地域でも人道援助を行っています。

キーウでは、地下鉄駅のシェルターへ救援物資を提供したほか、4万2千人に応急手当の臨時講習を実施しました。

多くの救援金は有効に活用しています。日本赤十字社としては今後、得意とする保健医療支援を展開予定です。リハビリテーションセンターの改修、開設などを準備しています。

▽関連リンク

「ウクライナ人道危機緊急募金」ご報告 14万名以上の組合員から1億6千万円が寄せられました (2022年5月16日)