社会課題を現場に学ぶ ニーズに寄り添い運営を創造する市民団体を視察
2017年6月1日
パルシステムは2016年4月に「地域連携研究会」(運動委員会主催)を設置し、社会的に問題となっている貧困・格差問題に対し、会員生協や地域団体と連携して情報交換や学習会、解決への研究等を行っています。
2017年度の第2回は、5月19日に、埼玉県和光市の妊娠期から子育てまでを一貫して支援するわこう版ネウボラ(※)の取り組み、吉川市の地域の高齢者まで幅広く集まる「多世代型」のこども食堂を視察。子育ての経験や地域の特色をいかしながら、課題解決やあらたな取り組みを創造する現場にふれました。
子育て当事者が行政の子育て事業を変革
和光市で活動するNPO法人わこう子育てネットワークの代表理事・森田圭子さんに活動のきっかけや行政との連携などを伺いました。
転出転入が多い和光市は、知らない土地での子育てに、「不安や孤立感、夫婦間がギクシャク…そんなスパイラルにはまる人が多い。私自身そうでした」と森田さん。森田さんたちは、子育てサロンや訪問型子育て支援を開始し、15年後に子育てサロンが和光市の子育て世代包括支援センターに指定。センターにはケアマネジャーを配置し、“母子手帳”の配布やケアプラン作成、妊娠期から子育てまでのトータル支援、また訪問支援の拠点にもなっています。和光市は、このような子育て当事者たちの取り組みと連携し、子育て事業をきめ細かく整え、「わこう版ネウボラ」と呼ばれる制度を充実させています。
※わこう版ネウボラ
ネウボラはフィンランドの制度で「助言の場」の意。介護保険のしくみを子育て支援に応用する、和光市独自の取り組み。
課題に柔軟に対応「高齢者支援がこども食堂に」
吉川団地の一角、介護サービスを行う福祉楽団地域ケアよしかわの事務所でこども食堂が開かれています。
「当初ここは高齢者の居場所を想定していたら、夏休みでしたが、お昼ごはんにと100円持たされている子、それすらない子どもたちと相対。民生委員さんの尽力もあり子ども支援に切り替えました」と事業部長の石間太朗さん。こども食堂といっても、だれでも無料で利用できるようにし、“利用”がいじめにつながらないよう配慮しているそうです。子どもたちにつられて高齢者の利用も増え、住民の居場所にもなっています。無料ということで団地内の商店との兼ね合い、また支援対象を特定しないので行政の補助対象に該当しにくいなど厳しい面もあるそうですが、ニーズの広がりに応えたいと、民生委員、ボランティア、近隣農家や企業など知恵や力を集め運営しています。
パルシステムの地域活動へ新たな可能性
2カ所の取り組みを視察し参加者は、「制度に運営をあわせるのではなく、ニーズに運営をあわせていくスタンスは生協にこそ必要と思う」「行政との連携だけでなく、当事者を巻き込んだ活動を組み立てていきたい」「和光市の訪問型支援や吉川市の“ころあい”は、たすけあい精神が生かされている。活動したい組合員に生協として積極的にサポートしてはどうか」など、パルシステムの地域活動へ新たな可能性を感じたようです。