「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(改定案)」へ意見提出 「子ども・被災者支援法」の理念守って

2015年8月11日

パルシステム連合会は8月7日(金)、政府が募集する「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(改定案)」へのパブリックコメントに対し、意見を提出しました。原発事故被害をわい小化することなく、国民への適切な支援を求めます。

 

自主避難者などへきめ細かい支援を

政府復興庁は7月10日(金)、「原発事故子ども・被災者支援法」(東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律)に基づく「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針」の改定案を発表し、パブリックコメントを募集しました。

これを受けてパルシステム連合会は8月7日(金)、意見を提出しました。いわゆる自主避難者(避難指示区域以外からの避難者者)に対する福島県の住宅支援打ち切りについて国による支援継続を求めるほか、医療施策などの適用範囲を福島県および近隣県に限定せず広範な地域へ提供することなどを求めます。

【要旨】

  1. 「避難指示区域以外の地域から避難する状況にはなく、支援対象地域は縮小又は撤廃が適当」との考えは、被災者の選択を国が支援すると定めた「子ども・被災者支援法」の理念に反しており、見直しを求めます。
  2. 被災者生活支援等施策に関する基本的な事項は、これまで通り個別政策を示し、被災者に対する細やかな支援を実施すべきです。
  3. 国の責任において、避難者への住宅支援を継続すべきです。
  4. 被ばく線量把握・評価、健康管理、医療に関する施策の対象は「福島県及び福島近隣県」に限定せず、広い地域で行われるべきです。
2015年8月7日
「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(改定案)」への意見
パルシステム生活協同組合連合会
代表理事 理事長  石田 敦史

 私たちパルシステムは、「心豊かなくらしと共生の社会を創ります」という理念に基づき、食や農、生命を大切に活動している生活協同組合連合会です。2011年3月11日の東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、被災者支援、被災地の復興支援活動を取り組んできました。
 このたび公示された「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(改定案)」は、これまでの活動から聞こえてくる被災者の声とかけ離れた内容も少なくありません。支援活動を継続してきた経験に基づき、下記の通り意見します。

  1. 「避難指示区域以外の地域から避難する状況にはなく、支援対象地域は縮小又は撤廃が適当」との考えは、被災者の選択を国が支援すると定めた「子ども・被災者支援法」の理念に反しており、見直しを求めます。
  2. 被災者生活支援等施策に関する基本的な事項は、これまで通り個別政策を示し、被災者に対する細やかな支援を実施すべきです。
  3. 国の責任において、避難者への住宅支援を継続すべきです。
  4. 被ばく線量把握・評価、健康管理、医療に関する施策の対象は「福島県及び福島近隣県」に限定せず、広い地域で行われるべきです。

理由は次の通りです。

1.「避難指示区域以外から避難する状況にはなく、支援対象地域は縮小又は撤廃が適当」との考えは、被災者の選択を国が支援すると定めた「子ども・被災者支援法」に反しており、見直しを求めます。

 改定案は、避難指示区域以外からの避難者について、放射線量が低減したとして支援対象を「縮小又は撤廃」する内容となっています。しかし、その根拠は不明な点が多い上、「放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていない」「被災者の意見を基本方針に反映させる」とした「子ども・被災者支援法」の理念や規定に反するものです。
 多くの被災者および支援者は、少なくとも年間1mSv以上の地域を支援対象とするよう主張してきました。国内の法令に基づく公衆の被ばく限度が年1mSvであることも鑑み、子ども・被災者支援法の理念に則って、国が責任を持って適切な支援を行うべきです。

2.被災者生活支援等施策に関する基本的な事項は、これまで通り被災者への支援を目的とした個別政策を示し、被災者に対する細やかな支援を実施すべきです。

 「被災者生活支援等施策に関する基本的な事項」では「医療の確保」や「子どもの学習」「心身の健康保持」など、それぞれの支援策が示されていましたが、改定案では、個別施策の列挙をやめ「特に重要なものについてのみ、記載」としています。
 改定案は、低線量被ばくへの影響を「疾病のリスクが高まることも可能性としては小さい」と示した環境省の「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」の中間とりまとめに基づいています。
 低線量被ばくの影響に対しては、いまだ科学的知見が十分蓄積されているとはいえません。現方針にあるそれぞれの施策を継続し、改定案にも引き続き記載することを求めます。

3.国の責任において、避難者への住宅支援を継続すべきです。

 福島県が、避難指示区域以外からの避難者に対する応急仮設住宅の供与期間を「平成29年3月末まで」としていることを記述し、「空間放射線量が大幅に低減していること等とも整合的」としています。一方で、国としての施策については触れていません。
 放射線管理区域レベルの汚染を示している場所も少なくないこと、多くの人たちが避難の継続を希望していることからも、国の責任において避難指示区域外からの避難者への住宅支援の継続を行うべきです。
 政府が指定した避難指示区域以外からの避難者は、「自主避難者」と呼ばれますが、自ら望んで選んだわけではありません。放射能による健康被害に不安を持ち、避難生活を選択せざるを得なかったという点では、避難指示区域からの避難 者と変わりません。避難生活の継続を選択すれば、家賃負担がのしかかり、たちまち経済的困窮に立たされます。このような事態を招くことは絶対にあってはならないと考えます。

4.被ばく線量把握・評価、健康管理、医療に関する施策の対象は「福島県及び福島近隣県」に限定せず、広い地域で行われるべきです。

 福島県による調査で、甲状腺がん悪性と診断された子どもは、悪性疑いも含め126人となっています。また、甲状腺がん以外の疾病については、調査が行われておらず、全体像が把握されていません。
 改定案は「福島県および福島近隣県においてがんの罹患率に統計的有意差をもって変化が検出できる可能性は低いと考えられる」と記載しています。しかし、福島県健康調査検討委員会甲状腺評価部会からは「甲状腺がん罹患統計などから推定される有病率に比べて数十倍のオーダーで多い」とする中間とりまとめが提出されました。
 甲状腺がんの多発が確認された以上、福島県外での地域における健診や医療費減免も、国の責任で実施すべきです。子ども・被災者支援法の目的にある「被災者の不安の解消及び安定した生活の実施に寄与すること」に則り、甲状腺検査の対象を福島県及び福島近隣県のみに限定せず、広い地域を対象としてください。

以上