政府の集団的自衛権行使容認に対し首相へ意見 恣意的な憲法解釈の変更は許されません

2014年6月2日

政府が進めている集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更に対し、パルシステム連合会は5月30日(金)、安倍晋三首相へ意見を提出しました。私的諮問機関報告に依拠した解釈変更は、立憲主義崩壊につながりかねず、強く反対します。

首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は5月15日(木)、報告書を提出し、これまで認められていなかった集団的自衛権行使を容認する見解を明らかにしました。これを受けて安倍首相は、歴代政府が積み上げてきた解釈を変更し、行使を容認する「基本的方向性」を発表しました。

憲法論を踏まえた議論が不十分なまま「私的懇談会」報告に依拠した恣意的な解釈変更は、憲法による統治を定めた立憲主義の崩壊につながりかねません。パルシステム連合会は、手順すら無視した憲法解釈変更の動きに強く反対し、5月30日(金)に首相へ意見を提出しました。意見要旨は以下のとおりです。

【意見要旨】

  1. 長年維持してきた憲法解釈を政府が恣意的に変更することは許されません。
  2. 憲法前文にある、全世界の平和を求める姿勢の否定につながります。
  3. 憲法9条にある、戦争放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を否定することにつながります。

提出した意見全文は下記をご覧ください。

「集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更に強く反対します」全文

2014年 5月30日
内閣総理大臣 安倍晋三殿
パルシステム生活協同組合連合会
理事長 山本 伸司

 集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更に強く反対します

 私たちパルシステム生活協同組合連合会は関東を中心に福島県から静岡県までの1都9県で活動している組合員130万人の生協のグループです。「心豊かなくらしと共生の社会を創ります」を理念に、助け合いの精神を基本として、1人ひとりが安心してくらすことのできる社会づくりなどに取り組んできました。

 私たちは、組合員の暮らしを大切に、日本と世界の人々が安心して暮らし続けられる平和な社会をこれからも維持・発展させていく立場から、現在安倍政権のもとで進められている集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈の変更に反対します。

 2014年5月15日、安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は報告書を提出し、「我が国と密接な関係にある外国に対して、武力攻撃が行われ、その事態が我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときには、我が国が直接攻撃されていない場合でも、その国の明示の要請または同意を得て、必要最小限の実力を行使して、この攻撃の排除に参加し、国際の平和及び安全の維持、回復に貢献することが出来るとすべきである」と「集団的自衛権」行使を容認する見解を明らかにしています。これを受けて、同日、安倍首相は、歴代政府が積み上げてきた「集団的自衛権」行使は憲法上容認されないという見解を変更し、容認するという「基本的方向性」を発表しました。

 このような安全保障政策根幹の変更が、憲法論を踏まえて国会で十分論議されることもないままに、時の政権の恣意的な選任による「私的懇談会」の報告書に依拠しなされるのであれば、憲法による統治を定めた立憲主義は崩壊することになります。政府は、集団的自衛権の行使容認をはじめとする安全保障に関する憲法解釈の変更やそのための法整備をめぐって、近日中に「政府方針」を表明し、遅くない時期に閣議決定することを目指しています。しかし現時点では、集団的自衛権の行使を容認する議論は深まったと言えず、時の政権の意向で憲法解釈を変更することは、民主主義のルールを逸脱する行為であり、法治国家として許されることではありません。

 私たちは集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更に、以下のことから強く反対します。

  1. 長年維持してきた憲法解釈を政府が恣意的に変更することは許されません。
  2. 憲法前文にある、全世界の平和を求める姿勢の否定につながります。
  3. 憲法9条にある、戦争放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を否定することにつながります。

 私たちは、生かしあい分かちあうことによる21世紀の新しい平和構築の方法を政府と国民が一体となり探していきたいと切望しています。そして、日本は世界の中でイニシアティブを取り平和憲法のもとその推進を行っていけると信じています。