もっといい明日へ 「超えトーク」第5回  “アート思考”で自分なりの答えを見つけよう

2023年2月13日

パルシステム連合会は2月2日(木)、東京・東新宿本部で、第5回超えトーク~「アート思考で探るこれからの組合員活動」を開催。美術教師の末永幸歩さんを招き、ワークショップを交え自分なりの視点、新しい価値を見出すヒントを学びました。

 

 

パルシステムでは2022年4月より「もっといい明日へ超えてく」と掲げ、一人ひとりの行動で未来が楽しみになるサステナブルな活動に取り組んでいます。
今回は美術教師でアーティストでもある末永幸歩さんを迎えオンラインで開催し、組合員や役職員など約150名が参加しました。

開会にあたり当会商品委員会・樋口民子委員長(パルシステム埼玉理事長)は、「もっといい明日へ超えてく」を深めるため、今日のワークショップで新しい自分との出会いや物語を見つけたい。楽しい学びを期待しています」とあいさつしました。

 

右/末永幸歩さん、左/司会のパルシステム群馬・東條陽子常任理事

 

母親がパルシステム組合員でこんせん牛乳が大好きだったという末永さんは、中学・高校の美術教師を経て現在、従来の知識や技術に重きを置いた美術教育とは視点を変え、アートを通し、ものの見方を広げることを重視した出張授業や講演などを行っています。

末永さんはアート思考について、“「自分なりのものの見方」で世界を見つめ、「自分だけの答え」を創り、それによって「新たな問い」を生み出すこと”と定義し、自分起点の考え方と強調します。そして次のエピソードを紹介しました。「大原美術館(岡山県)で、小さい男の子がモネの絵に『蛙がいる』と言ったそうです。絵には描かれていません。どこにいるのか問うと『いま水に潜ってる』と答えた。自分なりに見て答えを出す、これはまさにアート思考だと思います」。

いまなぜアート思考

アーティストたちは作品を生み出す裏側で何をしているのか。出発点は必ず興味の種であり、そこから自分なりのものの見方で世界をみつめ、自分だけの答えを創り、あらたな問いを見つけ出す。

末永さんは明確な答えを前提に探求する数学と比較し、アートは明確なかたちや実体がないものに自分なりの見方、答えを創っていくと説明しました。そして、「現代は変化のスピードが速く、ふり幅も大きい。これまでの常識を取り払って、異なる角度から見たり考えることが必要な場合がある。マルバツで採点できるテストのように学校教育で数学的な力が重要視されていても、実社会ではそれで立ち行かないことが必ずある」。そこがアートやアート思考が見直され、求められている背景だと分析します。

ワークショップではアート思考のヒントを学びました。パブロ・ピカソの「どんな創造も最初は破壊から始まるものだ」という言葉を引用し末永さんは、「自分の答えを創っていくには、まず今の自分のものの見方や考え方をあえて破壊することが大切」と言います。作品にダメ出ししたり、気づいたことについて「そこからどう感じるのか」を考える、また、「そうではないかもしれない」と自分の見方を疑うなど、創造と破壊をくり返しながら本当の意味での自分の答えを明確にしていくアウトプット鑑賞に、多数の組合員がチャットで参加し、アート思考を体験しました。

社会生活で応用

末永さんは「まだ仮説でしかないが」と前置きし、「組織のビジョンを自分ごとの問いに置き換え、個人の感覚や想いなども大事にしながら自分なりの考えを創り出すことが大切では」と話します。

末永さんが展開するアート思考の授業でのエピソードでは、リアルさの表現を自分なりに再定義したうえで「卵をリアルに表現する」という課題で、いろいろなことを試した生徒が発表の日、朝作った実物の目玉焼きを画用紙の上に置いたそうです。「『えーっ』と思われるかもしれませんが、当日の朝まで誰よりも長く考え続けた生徒の姿からは、課題が自分ごとになっていく様子が伺えます。また、勇気を持ってそれを発表したのは、自分の答えを大切にできているからこそと思います。さらに興味深かったのは、この作品を見た他の生徒たちがそれを自然に受け入れ『作者はどんなことを考えて作ったんだろう』と関心を抱いていたこと。自分の答えを大切にすることが、他人の答えを尊重し合う態度に繋がるのだと実感しました」。

このように組織の中でも常識枠外だとか無視してしまうような発想を、おもしろいねとお互い認め合い、種や芽の段階で摘んでしまわない風土が、創造的な活動を生む個人や組織の土壌を作っていくのではないかと末永さんは指摘しました。

「正解を探す力は必要だとは思います。でも一つの正解を探す力だけでは立ち行かない現代社会で、わずかでもアート思考できることが大きな力を生むと信じています」。

末永さんは最後に、「今日の内容を日常の生活や仕事にどう取り込んでいけるか、もっといい明日へ超えていくことにどうつなげていけるかなど、アート思考を駆使し考えて行っていただければ」と期待しました。