支援の現場に学ぶ コロナ禍における生活困窮者の現状と課題
2020年7月2日
パルシステム連合会の地域活動委員会は6月11日(木)、東京・新宿区の東新宿本部にて、一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事・稲葉剛さんを迎え、学習会を開催しました。
パルシステムグループでは、2008年の「年越し派遣村」を契機に、生活困窮者への支援活動に取り組んでいます。新型コロナウイルスの流行によって、より厳しい生活を強いられている方々に対して、青果専門会社の株式会社ジーピーエスやパン製造の株式会社パルブレッドを通じ、仕分け後の予備分として発生した青果やパンなどを提供しています。配送業務を受託する株式会社ロジカルも物資の運搬などに協力しています。
今回は生活困窮者支援に取り組む、つくろい東京ファンド代表理事・稲葉剛さんを迎え、コロナ禍における生活困窮者の現状と課題について講演いただきました。講演会はオンラインで開催し、合計109人(会場14人、オンライン視聴27人、録画視聴68人)が参加し理解を深めました。
「STAY HOME」で自宅格差が深刻化
稲葉さんは、コロナ禍による“STAY HOME”で「自宅格差が一層深刻化した」と指摘します。「ハードとしての『安定した住まいやインターネット設備』、ソフトとしての『安心できる人間関係』の有無が、くらしに大きな影響(格差)を与えています。4月までは自営業やフリーランスの方からの相談が目立ちましたが、5月以降は製造業など他業種におよび、2008年のリーマンショック以上の惨状、と恐怖を感じています」(稲葉さん)。
また住民票の喪失は、特別定額給付金の受け取りはもとより、求職活動への影響が大きいことから、「住まいを失わないための公的支援の拡充が必要」と訴えます。「ネットカフェなどに寝泊まりする『住居喪失者』は東京都で4千人ほどといわれています。30代を中心に若年層が半数以上を占め、寝泊まりに路上を利用する人も少なくありません。悩み事を相談できる人間関係の喪失も見られます。4月8日の緊急事態宣言発令以降は、1カ月半で約180件のSOSメールが届き、少人数の“緊急出動チーム”で支援先に向かっています」(稲葉さん)。
住まいの貧困を防ぐ 選別しない住宅支援を
つくろい東京ファンドほか14団体が加盟する「東京アンブレラ基金」では、「今日泊まるところがない」など緊急事態に陥った方々に、これまで1泊3千円・4泊まで緊急宿泊支援を行ってきました。4月以降はネットカフェの利用が困難となり、1泊6千円・7泊まで増額しています。「今後、新たに住まいを失う人が増えかねないことから、独自の個室シェルターを増設しています。携帯電話がない人の物件探しは困難なため、電話番号が取得できる仕組みの開発や、難民申請中の方など公的支援を利用しにくい人への現物(食糧)給付も始まりました」と話し、「選別しない住宅支援」を強く求めました。
つくろい東京ファンドや、パルシステムの電話相談などを運営する(一社)くらしサポート・ウィズなどの支援団体は、「新型コロナ災害緊急アクション」を立ち上げ「新型コロナウイルス:緊急ささえあい基金」を募集しています。それぞれの支援団体を通じて、住まいを失い行き場のない人への宿泊支援や小口現金給付などに活用されます。