憲法学習会を開催 「憲法は何を守るのか」

2020年2月4日

パルシステム連合会の地域活動委員会は1月9日(木)、東京・新宿区の東新宿本部にて、憲法学習会を開催しました。

パルシステムグループはこれまで、くらしや平和などにかかわる日本国憲法、それに関する国民投票とその課題などについて学び、改憲の動向を注視してきました。

今回は憲法学の第一人者・早稲田大学大学院法務研究科教授の長谷部恭男氏を迎え、大日本帝国憲法から日本国憲法についての歴史的経緯や内容の違い、そして憲法の解釈に関する課題等について講演いただきました。講演会には54人が参加し理解を深めました。

開会にあたり地域活動委員会の藤田順子委員長(パルシステム神奈川ゆめコープ理事長)は「“憲法は何のために、誰のためにあるのか”を知ることと、改めて改憲をめぐる論点の理解を深めたい」とあいさつしました。

憲法学者の長谷部恭男氏を講師に迎えました

日米安保条約と憲法9条

長谷部氏は安保条約の条項から、この間の政府の改憲論にふれ、「日米安保条約の5条は、それぞれの当事国の『憲法上の規定及び手続に従って』共通の危険に対処する旨を宣言するが、日本は憲法9条で『国際紛争を解決する手段としては戦争と武力の行使を永久に放棄する』と謳っており、歴代内閣は『個別的自衛権のみ、行使できる』としてきました。これは日本国民に対する約束として守られてきたと私は思っています」と指摘します。

しかし2014年7月に安倍内閣が解釈を変更し、一部分は集団的自衛権(同盟国などが攻撃されたとき、自国への攻撃と見なし反撃できる権利)を行使できるとしました。「根拠らしいものとして提出されているものは船舶の拿捕(だほ)など、説得力に乏しく、かつ、武力行使の範囲がまったく曖昧模糊としています」(長谷部氏)。

憲法の意義「何を守るのか」

主に提案されている憲法改正の内容は、「法律を変えることで十分間に合う」と長谷部氏は言います。「日本国憲法は硬性憲法で、中長期的に守っていくべき基本原則を定め、短期的な利害調整が行われる日常生活から隔離するもの。むやみに触ってはいけない。だからこそ、憲法は変えにくくなっているのです」とし、「そのことを政治家は頭に入れ、むしろ目の前の課題に注力すべきでは」と主張します。また、「憲法の条文自体にこだわることに、どんな意味があるか」として、次の言葉を示しました。

「憲法のせいでアメリカが民主的なのではなく、アメリカ社会が民主的だから憲法が守られている。因果関係を間違えてはいけない」(ロバート・ダール:政治学者)

最後にラーニッド・ハンド(アメリカの裁判官)の「人々の心の中で自由が死んでしまえば、憲法も法律も裁判所もまったく役に立たない」という言葉を引用し、「人間同士が尊重し合い、それを心の中で大事にしていくこと、憲法はそれを守るためにあるのだと思う」と締めくくりました。

閉会あいさつで地域活動委員会事務局長(当会執行役員)の談麗青は、「憲法の改定をめぐる動向に注目が集まる中、的確な判断をするためには、まず私たち一人ひとりが憲法について関心をもち、もっとよく知り、考えを深めていくことが大切です。戦後75年の節目にあたり、日本国憲法の意義、憲法と私たちのくらし、平和の大切さをグループ全体で共有し、平和を礎にした社会づくりをめざしていきましょう」と呼びかけました。