「農業にはいろんな人が活躍する場がある」 産直産地に学ぶ農福連携

2017年7月4日

パルシステム連合会は6月6日(火)、東京・新宿区の東新宿本部で、総合福祉推進委員会主催学習会「パルシステム生産者から学ぶ農福連携」を開催しました。

パルシステムは多様化する福祉課題に対し、理念である「共生の社会」を念頭に総合福祉政策を推進しています。そのなかで近年、パルシステムの礎である「産直」を活かす福祉―「農福連携」の可能性が話題に上っています。

農福連携は、人手が不足する農業分野と働く場所が不足する障がい福祉分野の連携で相互の課題を解決する仕組みとして注目されていますが、困難も多く簡単には広がらない状況です。今回、先進的に取り組む産直産地・㈱野菜くらぶ代表取締役の澤浦彰治さんを招き、農業での障がい者雇用の事例から農福連携の可能性について学びました。

野菜くらぶの澤浦彰治さん

究極は“人をいかす”こと

講演に先立ち総合福祉推進委員会の中島洋子副委員長は、「近年、地域の課題解決としても広がりや注目を集めている農福連携だが、産直のパルシステムとしては何ができるかを考えていただきたい。共生の社会に向け動き出す機会ではないか」と挨拶しました。

野菜くらぶの澤浦さんは、「きれいごとでなく、課題も含め率直に話したい」と前置きし、雇用の経緯や現状、思いや夢など語りました。高校の恩師に頼まれ初めて障がい者を雇用。障がい者支援センターの方の力も借りながら努力したが結局その方は退職。徒労感ばかりが残り、支援センターの人に「うちではムリです」と話すと、「障がい者雇用を使命感にしてはだめ。健常者同様、必要とする仕事ができる人を採用すればいい」と言われ気持ちがすごく楽になったそうです。

「いろんなことができなくていい。お願いしたい仕事一つができれば」と採用したのが機材を扱える男性。精神障がいがあり、いじめられて職を転々としていましたが、もう3年働いているそうです。「一つずつ仕事をお願いすればちゃんとできる。あいさつやコミュニケーションは無理強いしないんです。機械いじりが得意で、みんな頼りにしています。お願いした仕事は健常者と同じようにできるので、彼は今、健常者と同じ時間給で働いています」と澤浦さん。

「他にもパソコンが得意、パック詰めならできるなど、できることを仕事にしてもらっている。一生懸命やっている姿はまわりに良い影響を与え、生産性もよくなった。実際、以前から勤めている人たちが、彼らに接したり、サポートすることで変わり、人間関係のギスギスが少なくなってきました。農業にはいろんな人が活躍する場があるんです」。

思いとリスクのジレンマのはざま

一方、労災や労務上の訴訟などが起きた場合の不安はつきまとうと言います。「今後も受け入れたい思いはすごくあるのですが、万が一何かあったとき、本人は良くても家族がどう捉えるかわからずリスクを感じます。ジレンマです」。そこで澤浦さんは家族に職場を理解してもらいたいと、新年会など、家族の社内行事参加を積極的に勧めているそうです。また、今後さらにいろんな人が活躍できる場を創出し、正当に評価できるしくみを作ろうと、評価基準や賃金体系も検討し始めていているということでした。

参加者からは、「人材はどのように見つけるのか」「都市に住んでいる障がい者は産地とどうつながれるか」などの質問や、パルシステム商品のメーカー社員で障がいのあるお子さんを持つ方からは、「娘は非雇用型の作業所に通っているが、皆勤でも1カ月5000円以下の賃金(工賃)。働く場の可能性を見つけて、これからも雇用を進めていただきたい」と大きな期待を寄せました。

最後に田原けい子委員長は「今日は事例を本音で語っていただき参考になった。「農福連携」は産直のパルシステムだからこそできる取り組みではないか。今後引き続き研究して、どこまでできるかを探っていきたい」とまとめました。

講演会のようす1