東日本大震災から4年――宮城県南三陸町の「仕事おこし」を支援(社会貢献活動レポート|2015年4月)

2015年4月1日

(左)南三陸の「志津川自然の家応急仮設住宅」(現在の様子)、(右上)仕事おこしで着目した「南三陸杉」の丸太、(右下)「南三陸杉」を活用して建設されているパルシステム茨城の組合員施設「日立館(仮称)」(2015年5月21日現在)

高い評価受ける南三陸杉
大臣賞受賞10日後に震災が

東日本大震災で南三陸町は、町内の建物の6割を津波によって流失する大きな被害を受けました。一時は、人口1万8千人の過半数となる9746人が避難し、いまも多くの人々が仮設住宅で生活を送っています。新たな住居を建設するための造成地は、3月から引き渡しが始まったばかりで、すべての避難者が仮設住宅から離れられるのは2018年とも言われます。

「1995年の阪神淡路大震災との違いは、多くの住居が働く場所を兼ねていたことです」と、パルシステム連合会地域活動支援課の鈴江茂敏課長は言います。南三陸町には、1階に事務所や店舗、加工場があり、2階以上を住居とする建物が数多くありました。住居だけの建物に住んでいても、職場近くに立地しています。津波によって建物が流失したことで、仕事と住居がいっぺんに流されたのです。

鈴江さんは「もちろん、避難生活を送りながら勤務先へ通うことも大変です。しかし、住居も仕事も奪われた南三陸の人々は、生活を再建するために仕事おこしもしなければならないのです」と現状の厳しさを語ります。

パルシステムが一般社団法人地域再生コミュニティビジネス推進協会(以下、CB協会)(※)を通じて支援する南三陸町の復興活動は、町で産出する木材の活用です。水産業のイメージが強い南三陸町ですが、町面積の8割を森林が占めます。

産出する杉は「南三陸杉」と呼ばれ、全国林業経営者コンクールで最高賞の農林水産大臣賞を受賞するほど、高い評価を受けています。しかし、授賞式が行われたのは2011年3月1日。それから10日後に震災が発生し、南三陸杉が大きな注目を集めることはできませんでした。が、復興へ歩み出そうとしたとき、仕事おこしの素材のひとつとして、地元の人々が南三陸杉に着目したのです。

仮設住宅で現在も生活

3月に引き渡された「災害公営枡沢住宅」

加工や運搬で小さな経済の循環
パルシステム茨城の組合員施設にも採用

南三陸杉の活用をめざし、CB協会では2013年度、長さ4メートルの間伐材200本を購入しました。「間伐材とは言いますが、家の柱として充分な太さのある立派な丸太です」(鈴江さん)。この丸太を地元の製材所に依頼して、それぞれの用途に合わせた形へ加工します。これらの工程が重なるたび、加工費や運搬費が加算され、建築に使用されるときには3倍程度の価格になります。これを地元で、家などを建築する資材として使用します。

つまり、丸太を購入して加工を依頼することで乾燥や製材、運搬などの仕事が発生。「地域で産出された木材を購入し、地元で加工し、地元の人が購入する。そうすることによって、小さいながらも地域の経済の循環が始まりました」(鈴江さん)。

また、CB協会では、パルシステムの組合員や役・職員、配送を委託している会社のみなさんなどを対象に、南三陸町の現状を紹介する見学会を開催しています。パルシステム茨城のみなさんを対象にした見学会では南三陸杉の活用を知り、組合員から「ぜひパルシステムの施設に活用できないか」との声が挙がったそうです。

これを受けてパルシステム茨城では、日立市に建設を予定していた組合員施設「日立館(仮称)」での活用を決めました。南三陸の木材は、建物の柱や保育室の壁などに使用される予定で、7月の竣工へ向けて建設が進められています。

CB協会は2014年度、購入する南三陸杉の丸太を350本に増やしました。今後も、木材を希望する消費者と、産地の南三陸とをつなぐ活動にも力を入れていきたい考えです。南三陸以外の人が木材を購入すれば、そのお金が南三陸へ入り、地域内で循環することになります。

使って感想を伝えるのも支援に

もうひとつの仕事おこしが、仮設住宅に住む人々が作る商品販売の手助けです。水産加工が盛んな南三陸では、カキの殻むきや魚肉のほぐしなど、手仕事に長けた人たちが多くいます。仮設住宅では、住民同士のコミュニケーションと生きがいづくりを図るため週1回、集会所で布ぞうりやろうそくなどを手作りしています。

CB協会では布ぞうり、トンボ型ストラップ、ろうそくの3種類を紹介し、購入を呼びかけています。「売るからには、売れるような商品にしないといけません。品質を上げて魅力ある商品にするためにも、購入したみなさんにはぜひ感想を寄せてほしいですね」(鈴江さん)。

南三陸町歌津の仮設住宅のみなさんが作られた『歌津の布草履』

被災地を伝える報道が減っていくなか、継続して購入されるための商品づくりが求められています。寄付の感覚で購入する「施し」ではなく、ほしい商品づくりへのサポートも復興支援につながります。「組合員や職場だけでなく、職場や友人、近所のみなさんを取り込んで多く購入すれば、送料は1個あたり100円にもなりません。みなさんで購入し、メッセージを送って、できれば南三陸を訪れてほしいですね」と、鈴江さんは話します。

地元で小さな経済が循環する輪をたくさんつくり、仕事おこしにつなげる――。復興を通じて、南三陸は新しい経済のカタチをつくっているのかもしれません。手仕事の商品購入を通じたコミュニケーションは、新しい社会づくりを担うチャンスでもあります。

※震災や災害の復興支援を含めた地域再生、地域活性化、コミュニティビジネスの推進を行うことを目的とした団体。

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