「予約登録米制度」でつながり、支えあおう(社会貢献活動レポート|2011年4月)

2011年4月1日

パルシステムの予約登録米の登録が5月23日から始まりました。1995年の開始から17年目を迎える2011年度は、17万8千名の登録をめざしています。2010年9月からは、産地を特定した利用ができなかったコア・フードの米は、3銘柄を選べるようになりました。単に「売る」「買う」だけの行為でなく、産地の自然を守り、生産者や地域とつながり、日本の農業を支える予約登録米のしくみを、産地はどのように受け止めているのでしょうか。東日本大震災の直接の被害はなかったという「コア・フード米庄内つや姫」の産地、庄内協同ファームの志藤(しとう)正一さんからお話をうかがいました。

『コア・フード米 庄内つや姫』の実る山形県庄内平野

庄内協同ファーム
志藤 正一さん

新品種「つや姫」が好調
コア・フードで予約開始

「味は甘みがあって粘りがある。とくに炊き上がりはカンペキに違います。真っ白に見えるほどきれいで、粒が大きく見えますよ」と、志藤さんが満足そうに語る新品種「つや姫」は、山形県が2010年の生産から本格的に売り出した新銘柄です。産地の山形県では、有機栽培か特別栽培(化学合成農薬および化学肥料の使用が慣行栽培の2分の1以下)でなければ栽培が認められないほど、県も力を入れています。

コア・フード米の「庄内つや姫」(産地:JA庄内たがわ、庄内協同ファーム)は、「宮城ひとめぼれ」(JAみどりの)、「大潟村あきたこまち」(大潟村産地会議)とともに、10年9月から予約登録をスタートさせました。通常の作付け前の時期でなく収穫後の緊急募集ではありましたが登録数は順調で、組合員から寄せられるひとことメールでも好評の声が届いています。

出荷量がわかるから田んぼも育つ

組合員からのうれしい声は、生産者の苦労の証。パルシステムの産直産地では、できるだけ農薬や化学肥料に頼らない方法で米を栽培しています。そのためには、たとえば除草剤を使用しない代わりに草取りを欠かさないなど手間をかけなければなりません。

しかし、こうして栽培した米も、残ってしまえば安値で売却せざるを得ないのです。有機栽培である「コア・フード」はともかく、「エコ・チャレンジ」の米は、一般的な慣行栽培の米とほとんど変わらない価格で出荷しなければならないとなると、育てた手間暇に見合う収入が得られず、田んぼを継続できません。

庄内協同ファームでは、すべての田んぼで化学肥料を使用していません。だから、組合員が1年間の購入を約束し、販売数量が見通せる予約登録米ならば安心して田んぼに手をかけ、大事に育てていくことができるのです。

アイガモ農法

2009年6月庄内産直ネットワーク公開確認会にて「生きもの調査」中

絶滅危惧種のアカガエルも見かける
豊かな土地へ

志藤さんは、「コア・フード米庄内つや姫」をはじめ「ひとめぼれ」や「でわのもち」(もち米)を栽培しています。そのほか豚の飼育や枝豆、柿の栽培も手がける生産者です。現在、4・7haの田んぼで米作りをし、うち3・5haが有機栽培で、アイガモの活用や「ふゆみずたんぼ」など、複数の農法で栽培することにより、安定した収穫量を実現しています。「ふゆみずたんぼ」を始めてから、生物多様性の豊かさが裏付けられるうれしい出来事がありました。3キロほど離れた田んぼまで、関東以北の絶滅危惧種に指定されているニホンアカガエルが見られるようになったのです。収穫後に田んぼの水を抜いていたころはほとんど見かけない時期もありましたが、「ふゆみずたんぼ」でさまざまな生物が育ち、その中でニホンアカガエルも戻ってきたようです。

生きものたちの働きは
肥料以上のもの

志藤さんの行う有機栽培や減農薬・減化学肥料の農法としてもっとも重要な要素のひとつは、田んぼの生きものの豊かさです。志藤さんは人間が肥料を施す代わりに生きものが土をつくり、養分を供給してくれる、と説明します。「生物多様性」という言葉は環境保全運動として語られることが多いですが、実はなるべく農薬や化学肥料を使わない農法に無くてはならない要素なのです。

生きものたちを育む田んぼの強さ。それは、昨年にも裏付けられました。2010年の夏は異常気象で雨が降らず、高温が続く過酷な年となりました。全国の米産地では収穫量が減少し、収穫できても白かったり、砕けやすかったりする米が多かったと言います。

それに対し志藤さんの作った米は「悪いどころか、有機栽培のお米はこれまででいちばん収穫できたくらいです」と話します。これまでの土づくりが間違っていなかったと、あらためて自信をもつことができたと言います。豊かな土づくりの裏には、田んぼに育まれたさまざまな生物の強さがあるかもしれません。

土作りへの自信を強める一方で、今心配なのは、米全体の傾向としては需要の落ち込みや作柄の不良から、価格が大幅に下落したこと。志藤さんが栽培した米も例外ではありません。「政府の戸別所得補償制度がスタートし、少しは農業の先行きに希望が見えた矢先でした。ショックは大きく、このまま米作りを続けて果たして経営が成り立つのか、不安を感じています」と声を落としました。

〝交流〟が有機農業を
やりたい子どもを育む

しかし、将来に向け、うれしい話も。庄内協同ファームでは地元小学校と共同で毎年、田んぼの生きもの調査をしていますが、その小学校の卒業アルバムには「将来は有機農業をやりたい」という作文もあったそうです。「交流から農業を志す子どもが出てくれました」と、志藤さんはうれしそうに笑いました。

パルシステムとの交流も積極的です。パルシステム埼玉(以前はユーアイコープ)とは田植えや収穫の体験ツアーや、職員の研修なども受け入れています。「インターネットやカタログだけでも情報は入りますが、お互いの思いや喜び、苦労を感じるには、直接会って話すことが大事です」。

志藤さんはときどき東京在住の娘さんに、自分の作った米を送るそうです。「子どもたちからは、『届いたよ』くらいの連絡だけですが、お互いの状況を知る機会にもなっている。予約登録米でもそういう関係がつくれればいいなと思います」。

予約登録米は、単に「売る」「買う」だけでの行為ではありません。産地の自然を守り、生産者とつながり、日本の農業を支えるものなのです。東日本大震災では、水路や灌漑施設、パイプラインなどが被災し、米作りに欠かせない水の供給が懸念される産地も出ていますが、なんとしてでも復旧し、また安全でうまい米を作ろう、土地を荒らさないようにしようと生産者は動き始めました。私たちパルシステムも今、その思いに心を寄せ、つながるときではないでしょうか。

 

2011年産予約登録米(今秋以降)の状況と見通し

  • 東日本大震災で影響を受けた産直産地では、「とにかく田植えを行う」と苗の準備を進めていますが、田んぼ(畦、水路)が被害を受けているため、田植えの準備作業が遅れています。そのため新米の供給開始時期が変更になる可能性もあります。
  • 予約登録米は「優先的にお届けする」商品。今年はお米の作付け面積減少が予測されますが、年間通じてお届けしきれない場合は、通常供給企画を削って優先的にお届けします。
  • とくに被害が大きかったJAみどりの管内も、予約登録米の年間供給量の確保は問題ないと見ています。
  • 原発事故に関して、放射能検査を行政等が実施しない場合は、玄米検査を実施し安全性を確認します。

※東北の産直米を買い支えていただくことが支援につながります。昨年同様、予約登録米のおすすめをよろしくお願いします。

*本ページの内容は2011年4月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。