パルシステム生消協が若手リーダー研修を開催 地域を愛し次の農業を展望する

2017年8月14日

パルシステム生産者・消費者協議会(以下生消協)の若手リーダー研修が、8月3日(木)~4日(金)の2日間にわたって開催されました。この研修は、パルシステムの産直産地の今後を担う若手農業者の学習・交流の機会として実施されています。全国各地から10産地13名、会員生協の若手職員など合わせて26名が参加し、群馬県の産直産地である㈱野菜くらぶ、くらぶち草の会を視察しました。

野菜くらぶの人づくり・土づくりを視察

㈱野菜くらぶのある群馬県利根郡昭和村は、群馬県の北部に位置し、「こんにゃく芋」の生産量は日本一を誇るなど農業が盛んで、河岸段丘と豊かな農村風景が広がる地域です。この日は、㈱野菜くらぶ専務取締役・毛利嘉宏さんの案内で、同社と関連会社の施設を見学しました。

野菜くらぶの毛利嘉宏さん

まずは2,500平米ある出荷場を訪問し、主要作物であるレタスなどの鮮度維持に欠かせない真空冷却槽について説明を受けました。その後、外食産業と共同出資で設立した㈱サングレイスのほ場を見学し、竹内泉農場長から「隔離土耕」という環境制御された手法での大玉、ミニトマトの生育について説明がありました。「土は蒸気消毒しており、微生物の割合も6割と良好です。茎の太さを維持しながらの長期穫りは、たくさんの玉を持って木が疲れてしまうため、管理に気を遣います」(竹内さん)。

竹内さんから生産の工夫などをヒアリング

グリーンリーフ㈱では㈱野菜くらぶから出荷される野菜を加工しています。パルシステムPB商品で人気の「産直野菜で作った糖しぼり大根」「産直野菜で作った白菜漬」、「コア・フードこんにゃく」のほか、冷凍野菜も生産しています。「農法にこだわって栽培した野菜を、規格外で出荷できないのはもったいないと設立しました。素材を生かし添加物は使いたくないので、調味液も自社で製造しています」と取締役工場長の原ミツ江さんは話します。今後の課題は「製造努力し、賞味期限を伸ばすこと」と挙げました。

工場長の原ミツ江さん

食べる人に感動を与える農業を

澤浦彰治・代表取締役社長の講義は、経営理念である「感動農業」「人づくり・土づくり」の説明から始まりました。「なぜ経営理念が大事かというと、未来は思考のなかに入っているから。それを取り出しかたちにするのが仕事です。私は食べてもらう人に感動を与える農業がしたい。その仕事は人がつくっている。だから今回のような交流は大事なんです」。

澤浦さんによる講義

じり貧のこんにゃく農家から一念発起し、仲間3人と㈱野菜くらぶを1992年に設立してから、澤浦さんの挑戦は今なお続いています。昨年には女性が働きやすい職場づくりをめざして社内託児所を設立、新規の雇用獲得に好影響を与えています。「子どもが親の働く姿を見ることで、将来の仕事に対してネガティブでない印象を与えられると思っています。当社で働く82歳のスタッフが声かけに立ち寄ると子どもたちに大人気です」。高齢者や障がい者雇用など人材育成にも注力しており、積極的に外国からも採用。太陽光発電の会社も立ち上げ、グリーンリーフ㈱の工場に供給しています。

参加者からは外国人実習生制度の課題と今後、新規就農支援についてなど多くの質問が出され、活発な質疑応答が行なわれました。澤浦さんは「努力と比例して成果は出ない。トライ&エラーの蓄積が成果となって、ある段階でブレイクスルーする。そこまでがんばれるかどうか。僕だって失敗ばかりしていますよ」と参加者の笑顔を誘いながらエールを送りました。

農業を取り巻く物流事情は深刻

翌日は群馬県高崎市西部の倉渕にある、農薬や化学肥料に頼らない野菜づくりに取り組んでいる生産者団体、くらぶち草の会を訪問しました。代表を務める佐藤茂さんの父が1945年に入植し、原野を切り拓いて生まれた土地で、1988年に有機の出荷グループを結成したのが始まりです。ほうれん草、小松菜、きゅうりなど年間を通して約40品目を生産し、「土地が狭く、有機農業に適している」と佐藤さんは言います。現在では生産者は37世帯、うち新規参入は19世帯と、県と連携を密にしながら積極的に受け入れを行なっています。「かつて8千人いた村も、いまでは3千5百人と人口減少が止まりません。若い人たちの考えも取り入れながら有機農業を継続し、なんとか地域を残したい。農業だけでなく、祭りの開催や道の駅の開設など、地域を活性化させる取り組みをしています」(佐藤さん)。物流事情も深刻で「有機農産物は荷物がまとまらず、運送会社に嫌がられる傾向にあります。ネットワークを組んでいまはなんとかやっている状況です」と話し、闊達な意見交換が行なわれました。

くらぶち草の会の佐藤代表

人が地域に根ざせる環境づくりを進めたい

本研修を振り返り、参加者からは「人とのつながりを大事にし、地域存続のために雇用をいかに創出するか。人が地域に根ざせる環境づくりを進めていく必要があるとつくづく感じました」、「自分は今、親から代を引き継いで、まさにリーダーとは何か、これからの農業はどうしたら良いか、日々考えながら農業を行っています。愛する地域のため自己を確立し、努力し続けなければならないと強く感じました。今後も積極的に家を出て交流したいと考えます」といった感想が寄せられています。

今年度の若手リーダー研修は全3回を予定しており、㈱ジーピーエスの視察を経て今回で2回目、10月には昨年農林水産祭むらづくり部門で天皇杯を受賞した、愛媛県の産直産地・無茶々園への訪問を予定しています。

パルシステム生産者・消費者協議会