「主要農作物種子法」が廃止 農業やくらしへの影響について学びました

2017年6月20日

パルシステム連合会は6月5日(月)、東京・文京区の林野会館で、4月に成立した「主要農作物種子法」廃止法案について学習会を開催しました。

種子法の廃止をめぐって学習会

稲、麦類、大豆といった主要食料3種を対象とした「主要農作物種子法」の廃止法案が4月に可決し、来年4月から施行されます。6月5日(月)の学習会には、パルシステムグループの役職員、組合員、生産者ら88名が参加し、法案の内容や廃止がもたらすくらしや国内農業への影響について学びました。

3部構成で行われ、島田朝彰・当会産直部長から農林水産省への経緯と趣旨に関するヒアリング報告、山田正彦・元農林水産大臣より今後の日本農業への影響について、コア・フードリレー米の産地である日本の稲作を守る会(栃木県)の稲葉光圀さんより生産者の立場から見解がありました。

価格上昇や多様性の喪失を懸念

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「主要農作物種子法」は、戦後の混乱のなかで、確かな種を確保し、国民への安定供給をめざして1952年に制定されました。以降、公的機関によって優良品種の開発と検査管理が行なわれてきました。

島田部長は省庁への聞き取りをまとめ「食味や多収性の向上で収入が増えるなどのメリットがうたわれていますが、農家の手が届かないところで『種が動く』という怖さは否めません。また、規制改革推進会議の意見のみを根拠として、見直しではなく一気に廃案を提案するという乱暴さにも疑問が残ります」と指摘しました。

山田さんは、種子の価格上昇や多様性の喪失などを懸念しました。「主要穀物の種子が民間に開放されると種籾の価格が5~10倍になるとの試算もあります。これまで公費でまかなってきた研究開発費が種子代に転嫁されるからです。また5月に成立した農業競争力強化支援法により、これまで培った種の研究開発の知見を、すべて無償で、外資も含めた民間企業へ譲渡するとしています。農家が企業へ種の特許料を支払うような状況も想定され、極めて危険です」として、TPP協定との関連性を指摘し、公共品種を保全する活動をすすめる考えを示しました。
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生産者にとっては「規制強化」

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稲葉さんは生産者の立場から「この廃止法案は民間の種子企業に対する規制緩和であって、生産者には規制強化、消費者には選択肢を狭めるものとの認識です。民間企業といっても開発資金力のある一握りの多国籍企業に集約され、弱小の種子業者は立ち行かなくなるでしょう。遺伝子組み換えなど、過度に品種改良された種が出回ることも予想されますが、病害虫対策など、かなりの部分は『栽培技術』でなんとかなるもの。しかしこの『栽培技術』が、特許侵害として農民から奪われようとしているのです。環境負荷も大きく、一番の犠牲は次代を生きる子どもたちだと心配しています」とコメントしました。会場の組合員や生産者からは「限られた選択肢の中から食べ物を選ばされるのかと不安」「農家が提供するのは土地と労働力だけになってしまう。『作る』という権利をどう守っていくのか」など、数多くの声が上がりました。

まとめとして渋澤温之・当会常務執行役員は「種からすべて一部の企業に握られてしまうとなったら、生活者としてたいへんな事態です。生活協同組合として事業と運動をどう組み立てていくのか、いままで以上に深く根を張って産直運動を進めていきたい」と意気込みを語りました。