第3回生活困窮者自立支援全国研究交流大会が開催 くらしの相談に見る「成人した子ども」という課題

2016年12月7日

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第3回生活困窮者自立支援全国研究交流大会が11月12日(土)13日(日)に開催され、約1,200名が参加し生活困窮に絡んだ課題について活発な議論を行いました。

「くらしの相談ダイヤル」を事例に議論

パルシステム連合会は本大会の運営に協力し、13日の分科会では第5分科会「社会的自立ができない成人した子ども」を担当しました。テーマに、引きこもりと高齢化、地域社会との関係、望まれる人と社会の関係づくりについて議論しました。

生活困窮者自立支援法(以下、自立支援法)は、社会的困難を抱えている人が貧困・格差が広がる中で経済的な困窮ばかりでなく社会的孤立に陥り生活保護に至る前に当事者を手当する制度として、2015年4月1日に施行された法律です。川崎市教育文化会館を会場に行われた12日の全体会は、3年目の見直しが付帯条項にされた自立支援法に関する議論を中心に行われました。同法の策定に深く関わった宮本太郎中央大学教授や奥田友志NPO抱樸理事長等がコーディネートして、課題や浮き彫りになった問題をテーマに法改正の方向性について、セッションを通じてそれぞれの考えが述べられました。

特別講演では玄田有史東京大学教授が「希望学」を話しました。「希望は、与えられるものではない。棚からぼた餅はない、苦しんでもがいて自分の力で育て創り、実現しようとするモノである」と東日本大震災被災者との会話に触れながら説明しました。

地域社会が子どもを大人にする

慶應義塾大学日吉キャンパスへ会場を移した13日は、午前と午後に分かれて11分科会が開催されました。パルシステム連合会は第5分科会を主催し、くらしの相談ダイヤルを委託している生活サポート生協・東京の「実践からみえる社会的自立が困難な成人した子どもたちとその親の問題」についてディスカッションしました。

加藤彰彦沖縄大学前学長・名誉教授から「現在の子どもたちがなぜ大人=一人前になり難いか」を、子育てや地域社会、学校(教育)との関係で基調講演がありました。その講演を受け、地域の事例としてNPO法人くらし協同館なかよし塚越敎子理事長が、高齢の親の死去後、引きこもりの子ども(60代)が孤立死した事例などを紹介しました。

NPO法人文化学習協同ネットワーク理事で元教師の綿貫公平氏が、ヒエラルキーの強くなった教育現場で異質なものは排除する実態があり自らのペースで人生を編んでいくことが困難な今の若者像を語りました。

まとめとして、塚越氏から「一人前の大人になるには多様な大人モデルと接するのが一番であり、地域にあるNPOとして子育て世代に寄り添えるサポーターを育成したい」、綿貫氏から「本来平等に提供されるべき学びを通して、若者(大人も)が自らの必要な時に『生き直し』『学び直し』『働き直し』ができる社会への教育改革」について提言がありました。

最後に加藤氏が「地域社会の存在しない中では子どもは育たない=大人になれない」ことに触れ、一人前になるためには、「①生きていく場(そこでの経験を通し自我を育成し自らの拠り所ともなる居場所)、②仕事づくり(グローバル経済に翻弄されない地域経済の創造、日本ではモノづくり職人と一次産業の復活)、③学校の改革(本質的な学びの質を上げる、機会の平等=高等学校教育まで無償化)が重要な3点であり、その実現に向けて私たちが試されている時代である」とまとめました。